「え……君は?」

テルは女性の行動に驚きながらもそう聞く。

「失礼いたしました。私は2番隊隊長・ヤミでございます。」

ヤミはそう言ってもう一度、深々と頭を下げた。

それをアヤが面白くなさそうな顔をしながらヤミとテルを見つめる。

ショウは何かを考えるようにその光景を遠めに眺めていた。

「テラス様が王の間でお待ちです。」

ヤミはそう言って自分が入ってきた方の扉へテルを誘導する。

「皆も連れて行っていいのかな?」

テルの質問に驚いた顔を一瞬見せながらも表情を戻し、ヤミは丁寧に答えた。

「テル様のお好きなように。」

「テル様?」

アヤが理解できない感じで呟いた。

「ええ、テル様は国王テラス様の御曹司です。」

ヤミの答えにアヤだけならずショウも驚きを隠せなかった。

しかし同時にショウはなんとなくテルが話さなかった理由が分かったような気がした。

「でも俺の父親の名前はテラスなんかじゃない。本物かどうかもよく分からない。」

テルの言葉にアヤは眉をひそめながらも一緒に部屋を出てヤミたちについていく。

それに続いてショウも部屋を出た。

「本物かどうかも分からない?」

「俺の父親の名前は英[ヒデ]って言うんだ。だから……」

「じゃあ全然違うじゃん。」

アヤはあんた頭大丈夫?といったジェスチャーをする。

「けれどあの黒いローブの男・ロウは確実に俺をテラスの息子だと言った。」

「えぇ、テル様は絶対にテラス様の御曹司だと思います。顔がそっくりですから。」

ヤミが振り返りながらそう話す。

廊下を歩いていくと4人は階段に辿り着き、その階段を上る。

「それに俺の父親は……2年前に死んだ。」

テルがそんな事を呟く間に4人は王の間の扉に辿り着いていた。

そこで待っていた兵士二人が重い扉をゆっくりと開く。

大きく開けた王の間の奥に座る男が一人いた。

「テラス様。テル様をお連れしました。」

ヤミがそう報告し、大きく頭を下げる。

「ご苦労であった。さぁ入られよ、テルそして連れの者。」

手を広げて、中に入ることを促すテラス。

テラスの顔は確かにテルに眼鏡をかけさせて、少し老けさせただけで瓜二つであった。

テルと同じ色の髪の毛、それはアヤやショウだけでなくテルにとっても父親と同じ姿にしか見えなかった。

「さぁ、参られよ。」

テラスに促され、王の間に敷かれた赤いじゅうたんの上を歩いていく3人。

王テラスの横には赤い鎧を纏った男が控えている。

ゆっくりと歩いていく3人。

「久しぶりですね、テル。何も知らないあなたを無理に連れてきて申し訳ありませんでした。」

テラスの前で歩みを止める3人。

「本当に、父さんなのか?」

テルの言葉に微笑み返すテラス。

「死んだんじゃなかったのかよ……どういうことだよ……」

「ロウから聞いたのでしょう? この世界へ来るとそちらの世界では死ぬと……」

「そんな喋り方、しねえだろ……」

「私にも立場と言うものがありましてね。」

テラスはそう言って少し苦笑いをしながら、眼鏡を右手でくいっと上げた。

「ちょっと待てよ……」

テルはあることに気がついた。



「お前、父さんじゃねえだろ!」