『sogno』の地図上で北に位置する『レグノ王国』にテルたちは気を失ったまま船で連れていかれた。
テルが目を覚ましたときはベッドの上であった。
「起きたの?」
テルの視界にアヤのしかめっ面が入る。
「アヤ……?」
テルがそう呟くと、少しびっくりした顔をして視界から消えるアヤ。
テルはゆっくりと起き上がり体を伸ばすと、キョロキョロと周りを見る。
そこには、ベッドの横に立つアヤと、部屋の反対側からこちらを見つめるショウの姿があった。
「起きたか、テル。それに、お前いったいどこに行ってたんだ?」
ショウがそう喋りかけながら歩いてくる。
「えっ?」
「港町ボルトに着いてからだよ。」
ショウがそう言いながらアヤの方を指差す。
「こいつなんか町ん中走り回ってお前のことずっと探してたんだぞ?」
そう言ってショウがにやっと笑う。
「ちょっと! 誰が走り回ってよ!」
アヤが顔を赤くしながらショウに向かってそう怒鳴る。
「……何?」
アヤがテルを睨むと、テルは何も無いと首を横に振る。
「で、どこ行ってたのよ?」
アヤが顔を近づけさらに睨んでくる。
「どこって、その……」
テルは返答に困り、苦笑いをして誤魔化そうとする。
「やっぱり、あんた記憶喪失じゃないでしょ。」
アヤの言葉がテルにグサッと刺さる。
「え、いや……」
「俺らをここに連れてきたあいつは誰なんだ?」
ショウが言うあいつとはロウの事だろう。
「えっと……」
テルはどう答えていいか分からず口ごもる。
「何か隠してんのか…」
ショウはそう呟いて、諦めるように窓から見える風景を眺めた。
窓から見えるのは綺麗な城下町でかろうじて人の動きまで見える。
エミスフェロ都市のように乱雑したネオンタウンとは違い、家や道が規則正しく並べられている町であった。
全体的にレンガ調の色が多く、赤っぽい。
「なんかむかつく。」
アヤはテルに向かってそう呟くと諦めて隣にあったベッドに座った。
「……ごめん。」
テルが謝るとアヤは呆れた様にため息をついていた。
しばらくすると扉の鍵が開くような音がして、一人の女性が部屋に入ってきた。
黒い鎧を身に纏い、剣を腰に刺しており、長い黒髪を後ろで一つくくりにしている。
女性の鋭い目が一度アヤを睨むと、すぐにテルの方へと目線を動かした。
「お待たせしました、テル様。」
そう言って女性はテルに深々と頭を下げた。