テルは港町へと降り立っていた。
「ホールの行き先が決められないのは面倒ですね。」
テルの横では仮面をつけたロウの姿もあった。
ロウは仮面を外し、白い髭を空気に晒す。
(ふざけんなよ……)
テルの目の前で一人の警官が殺された。
テルはその時、手に触れた腰のあるものに目線を向ける。
(これは?)
それはアヤに貰った二丁の拳銃であった。
テルはそれに気がつくと考える間もなく銃をロウへ向けた。
「ふざけんなよ!」
ロウはそれに気がつくと、慌てることなくゆっくり振り向いた。
「こ、これは、テル様……」
ロウは少し困った表情を見せる。
「てめぇの勝手な理由で殺しやがって……許せねぇ。」
テルはそう叫び、ロウを睨み、拳銃を握る手に力をこめる。
「困ります、テル様。私はテル様を襲うわけにはいきません。」
ロウがそう言うがテルは表情を緩めることなく銃口をロウに向け続ける。
「いったい俺をここへ連れてきて何がしてぇんだ!!」
テルの怒り具合にロウは少し緊張感を高める。
「……分かりました、話しましょう。本当はテラス様から直接聞かせるおつもりでしたが、仕方がありません。」
ロウがそう言うとテルはしぶしぶ銃を下ろした。
「テル様はこの『ソグノ』の希望なのです。」
ロウの言葉にテルが眉をひそめる。
「この世界『ソグノ』はもうすぐ『ソグノ』に飲み込まれてしまいます…」
「言ってる事めちゃくちゃだぞ?」
テルがそう言うも、ロウは無表情で首を振った。
「この世界の名前は『ソグノ』。そしてこの世界を滅ぼすのもまた『ソグノ』なのです。」
「それを止められるであろう者がテル様なのです。」
「俺が?どうやって?」
テルの問いにはロウは何も答えない。
「いったい何なんだ?」
テルはそう呟きながら銃をロウに向ける。
「私にも分かりません。知るのは、テラス様だけです。」
ロウは寂しくそう答えた。
「何でだ!?」
「私がテラス様に命じられたのは、テル様をテラス様の下へ連れて行く、ただそれだけです。そのためにはどんな犠牲もいとわないと……」
テルのイライラはどんどん募っていく。
何も分からない、何も知らない。
自分が救世主と言うその老人は目の前で関係の無い人を殺した。
そしてその男はテラスという男がが自分の父親であると言う。
さらに訳の分からない世界。
何一つ分からない現状にテルはイライラが爆発しそうであった。