「ん?」
照が目を覚ますとそこは自分の部屋であった。
ベッドの横では目覚まし時計がジリジリと鳴っている。
照がそれを止め、カーテンを開けるとそこにはいつもどおり青い空と住宅街が広がっていた。
「やっぱり……夢?」
照はいつも通りの風景に安堵を覚えながらも先ほどの夢をもう一度思い返していた。
(夢にしてはやっぱ鮮明だよな……)
照はそんな事に呆けながら学校へ行く準備をして、階段を下りた。
「おはよう。」
「おはよ。」
照は母親と朝の挨拶を交わし、朝ご飯を食べるためにいつも通りの席に座る。
「なぁ、母さん。」
「なに?」
「父さんって死んだんだよな…」
照の質問に母親は心配そうな顔をしながら照を覗き込む。
「ごめん、何でもないや。」
照はそれに気がつき慌てて朝ごはんを食べ始めた。
そして駆け足で準備をし、いつも通り学校へ行く。
学校までの道のりは自転車で15分と時間的にも財政的にも嬉しい。
自転車を降りて、ロッカーで靴を履き替え、教室へ向かう。
教室へ着くとぎりぎりなのもあって殆どの生徒が教室にいた。
「おう、サボり。」
大輝が笑いながらそう言ってくる。
「サボり?」
「テストさぼったろ?」
照はそういう事ねといった顔を見せ、苦笑いをすると椅子に座った。
1時限目の授業は数学。
意味の分からない数字とアルファベットの羅列に嫌気がさしながらも照は書かれることをただノートに写していく。
授業をする先生の話も退屈でしかない。
それでもこれを乗り切れば2時限目は体育だ。
照はそう自分に言い聞かせ、なんとか授業を受けきった。
そして1時限目の授業を終えると、体育のために更衣室へ向かい、照たちは体操服に着替える。
「うーさぶっ……」
ジャージの袖の中に手を引っ込めながら大輝が呟く。
未だ厳しい冬は続く中、体操服とジャージ2枚というほうがどうかしている。
「うーさむっ……」
同じように体を丸めながら歩く照。
グランドの反対側にいる先生のもとまでぞろぞろと体操服に着替えた男子生徒たちが歩いていく。
そんな平穏はまたしても破られた。
「探しましたよ、テル様。」
聞き覚えのある声にテルは体が固まる。
「は?」
大輝が声に反応して振り向き、そこにいる謎の仮面の男を見ると、目を大きく見開き、固まる。
まわりの生徒たちも突如現れたその男の姿を見て、ざわついていた。
「勝手に帰られてしまって…」
ロウがにっこりと微笑むのと対照的にテルの顔はどんどん青ざめていく。
「……嘘だろ?」