数百メートル走ると、アヤはある家の前に立ち止まり、家の中の様子を伺う。
その家も半壊していて、見るも無残な姿であった。
「あんたちょっとここで守ってて。」
アヤはテルにそう言い残し、家の中へ入っていく。
「え、おい守っててって?」
テルの周りではクイールたちが奇妙な声を上げながらテルと間合いを保っている。
(何がどうなってんだよ!!)
テルは一番近いクイールに向け発砲する。
銃弾はクイールに当たり、クイールはうめき声を上げた。
「案外、撃ち易い……」
テルはそう呟きながら、順にクイールを撃っていく。
しかし弾切れが来てしまい、テルは一気に青ざめる。
まだ元気なクイールが1匹残っているのだ。
「いやいや、冗談きついぜ。」
テルは苦笑いするとクイールの突撃をかろうじて横に跳んで避けた。
しかしすぐにクイールはテルのほうへ向くと飛び出してくる。
「くそっ!!!」
テルがそう叫ぶと同時に槍がクイールに刺さり、クイールはうめき声を上げてその場に倒れた。
「お待たせ……てか、あんた弱っ……」
そこに登場したのはなにやら変わった槍を持ったアヤであった。
槍の先には刃が付いているがその逆にはなにやら装飾がされ、光る石がつけられていた。
アヤは一度苦笑いをすると、銃をもう一丁と大量の銃弾をテルに渡した。
「自分の身は自分で守る。」
テルはそれを受け取り、銃弾などをセットしなおすと立ち上がった。
「でもこれはいったい何が起きてるんだ?」
「クイールが何で町の中にいるんだろう……」
「クイール?」
テルの質問にアヤが眉をひそめる。
「は? あんた頭大丈夫?」
「うるせぇ、何もわかんねぇんだ! ここがどこなのかも俺がどうしてここにいんのかも……」
テルの言葉にアヤは少し何かを考えるようにテルを見つめていたがアヤはため息をつき口を開いた。
「記憶喪失にでもなったのかもね…」
テルはそうじゃないと言いたかったが話がこじれるので言うのをやめた。
テルの記憶にはきちんと高校の記憶やいろいろな思い出が残っている。
最後の記憶が眠るところなのも覚えている。
(やっぱり夢なのか?)
「クイールは世界にいる怪物たちの総称よ。こいつらの正式名称は『ワーム』。砂漠にすむ怪物。人の肉を食うわ。」
アヤの説明にテルはぞっとなりワームの死骸を見つめる。
「普通ならワームはこのエミスフェロ都市には入れなかったはず。地震で制御装置が壊れたのかもしれない……」