カジノの豪華な照明は大きく揺れ、繋ぎとめる力を失い、破裂しながら落下していく。
上下左右と無作為に揺れるため、テルは男から振りほどかれ、床を転がる。
「いってっ!!」
テーブルにぶつかった腰を抑えながらもテルはかろうじて床にしがみつく。
するとテルの目の前にアヤが倒れてきた。
テルがはっとなり上を見ると倒れてくるスロット。
テルはとっさにアヤの服を掴むと思いっきり自分のほうへと引き寄せた。
間一髪でアヤを守るも、二人の目の前でスロットが倒れ、大きな音を出しながら破片をあたりへと撒き散らす。
アヤは恐怖からか大きな悲鳴を上げる。
その悲鳴がテルに逆に冷静さを取り戻させ、テルはアヤを守るように抱きしめると、飛んでくる破片から身を守った。
しばらくして収まるとアヤは小さな声を出しながら、目を開ける。
するとそこはテルの胸で、テルの両手が自分を包んでいた。
アヤはびっくりしてその腕を振り払って、起き上がるとテルは痛みがあるのか少し顔を引きつらせながら起き上がった。
「イッタ……」
そう呟きながら腰をさすってアヤのほうを見る。
「……なに?」
「いや、無事でよかった。」
テルがそう言うとアヤは少し顔を赤くし、それを隠すように立ち上がった。
「うわ……悲惨……」
カジノの建物は崩壊しなかったものの、中の装飾は派手に破壊され、床を転がり、スロットなどの機械も崩れ、出口に行くには簡単ではなさそうだ。
「地震なのか?」
「とにかく外に出てみよ。」
二人は破片を避けながら入ってきた入口のほうへ進んでいく。
進む道中では人が何人か倒れていたりしたが、テルは状況を確認するために、まずは建物の外へ出て行くことを優先した。
そのテルの考えが正解であったことはすぐに判明する。
外に出たテルは驚愕の光景に言葉を失う。
栄えていた町は崩壊の色を見せ、人々が逃げまわっていた。
なぜなら巨大な虫のような怪物が町に溢れていたのだ。
「何でこんなところにクイールが!?」
アヤは慌てた表情を見せ、すぐに懐から銃を二丁取り出した。
「あんた武器は?」
アヤが緊張した面持ちでテルの方を見るとテルは首を横に振る。
「マジで……?」
アヤがありえないといった顔をしながら銃を一丁投げた。
「うわ、本物……?」
「冗談言ってないで! 私の家に行く。『魔槍[まそう]』を取りに。」
アヤはそう言っていろいろなものが崩壊している中、走り始めた。
テルもおびえながら銃を片手にアヤを追って走っていく。
途中、クイールと呼ばれる怪物が襲い掛かるがアヤは慣れた手つきで発砲すると怪物はひるみ、後ろへ後退した。