カジノの中は外よりも凄い人で歩くのも隙間を縫っていかなくてはならないほどであった。
少女はいつも通りと言った感じで隙間を通って奥へと進んでいく。
「この町の名前は何って言うんだ?」
ぶつかりながらもかろうじて少女についていくテル。
「は? そこから? ここはエミスフェロ都市よ。」
少女はフロントでなにやらカードを取り出し、受付の人へ渡す。
「エミスフェロ都市…?」
「そしてここは巨大カジノ『トバク』よ。ありがとう。」
そう礼を述べながら少女は受付の人からお金を受け取る。
「君は?」
「私? 私はアヤ。あんたは?」
アヤはルーレットのある場所へ辿り着くと一つの席に座った。
「俺は、テル。」
テルはアヤの後ろに立ち、そう答える。
「まぁどうでもいいけど……お願い。」
そう言ってアヤはディーラーにお金を渡し、チップを受け取った。
そしてディーラーがボールを転がすとアヤはボールのほうをちらっと見ただけで迷うことなく、チップを14の位置に10枚置いた。
「日本ってどこにあるか分かる…?」
「日本? 何それ?」
アヤはちらっとテルのほうを見ながらそう答えた。
(日本を知らない…?)
「じゃあ、アメリカは?」
「何それ、あんたの出身地?」
アヤはそう言って鼻で笑うとルーレットのボールの行く先を見つめた。
(マジか……いったいここは?)
もうここはテル様の夢ではありません
「誰かの…夢?」
「は?」
テルは慌てて首を振って何でもないと誤魔化す。
そしてボールが止まったのに気がつき、二人はボールの方へ目を向けた。
ボールは14の位置へと入っていた。
周りからは小さな歓声が上がる。
しかしアヤは気にすることなくチップを貰い、換金してもらうと席を立った。
「で、あんたはいつまでついてくるつもり?」
アヤは立ち止まって振り返るとテルにイライラしたように聞く。
「え……いや、その……」
テルは返答に困り、苦笑いをしながら頭をかく。
「はぁ……」
アヤがため息をつくと、なにやら黒服の男たちが周りを囲んだ。
「ちょっといいかな、お嬢さん?」
「あ? なに? 何も悪いことなんかしてないよ?」
アヤがそう言って男を睨むも、男はお構い無しにアヤの腕を掴む。
「ちょっと、離せ!」
「連れていくぞ。」
黒服男はそう言って2人がかりでアヤを連れて行こうとする。
「ま、待てよ。」
テルが慌ててその腕を離させようと間に入った。
しかし黒服男は他の男に目と顎で合図をするとテルを無視してそのまま連れて行こうとする。
テル 「お、おい!」
テルが他の男に捕まる瞬間、大地震がエミスフェロ都市を襲った。