しばらく経ち落ち着いたアヤがテルから離れる。
「ごめんね……」
アヤがそう呟く前でテルも少し照れ笑いをする。
「じゃあ行こっか。」
「……うん。」
そう言って二人はもう一度エレベーターを目指して歩き出した。
途中で道は無くなり、再び水の中へと進むこととなった。
「大丈夫か?」
「まぁ大丈夫……」
いつものように強く返ってこないアヤに少し戸惑いながらもテルは水の中に入り、アヤを待つ。
アヤも飛び込み、水面に顔を出す。
テルが意識して見るアヤの顔は水に濡れているのもあり少し綺麗に見えた。
少し見つめてしまったテルは我に返り、慌てて泳ぎだす。
アヤも泳いで進む。
「今は無理でも、ちゃんと返事はするからさ……」
テルはアヤの横でそう呟いた。
「だから少し待っててな。」
そう言うとアヤはゆっくり頷いた。
水路が終わり、再び上がる二人。
「また濡れたな。」
「うん、乾かした意味無い。」
少し元気を取り戻したのかテルに対し皮肉を言い始める。
「どうする? また休む?」
「……ちょっと待って。」
そう言ってアヤは魔槍を取り出し、ルートが着いてるほうをテルに向ける。
「ウィンド……」
風を起こし、テルの服の水分を取り除く。
乾くとまでは行かないまでも重かった服に軽さが取り戻される。
そのまま自分のほうに向け、自分の服を乾かす。
風に吹かれるアヤにテルはまたどきっとしてしまう。
今までテルが考えたことが無かっただけで、アヤは普通に可愛いのだ。
「あんまこっち見ないでよ!」
テルははっとなって後ろを向く。
それを確認するとアヤはスカートを乾かし始めた。
「いいよ。」
そう言ってアヤが魔槍をしまうと二人はまた歩き始めた。
なんだか意識してしまうテル。
自分がそういう目で見てしまうのか、それともアヤ自身がそうなのかは分からないが、いつもと違い、おしとやかで可愛く見える。
しかし二人のそんな時間はまもなく終わりを告げることとなる。
二人が歩く背後からゆっくりと巨大なマチナが忍び寄ってきていたのだ。
そのマチナの大きさは直径3メートルほどで、たくさんの腕が伸び、低空飛行を維持する。
そして、その背中には12と書かれていた。
つまり今回の目標であり最強の敵である。