エレベーターの前に辿り着いたショウとマユ。

「まだ二人はいなかったな。」

「無事でしょうか……」

心配そうな表情をするマユ。

「テルならきっと大丈夫だ。」

ショウの言葉にマユも少し安心していた。

「テル様ならきっとアヤさんも守りますもんね。」

マユはそう言って自分で頷いていた。

「ただ、マチナ12に出くわしてなきゃいいけどな。」

ショウの不安要素はそれであった。

今、二人がマチナ12と出会えば苦戦必死だろうとショウは思っていた。



ただ無言で歩いていくアヤとテル。

しばらくしてアヤが立ち止まった。

「……テルは……」

アヤがそう呟いたのを聞き、テルも立ち止まる。

「テルはどうなの?」

「どうって……その……」

テルはそう呟くと一度深呼吸をした。

「ごめん、突然すぎて何も分かんない……っていうか今まで生きるのに必死でそんなことも考えてなかった……本当にごめん。」

テルの返答にアヤはただ逆を見つめ聞いている。

「だからアヤを好きとか……今すぐには答えられない…」

テルがそう答え終えるとアヤはテルに抱きついてきた。

アヤ 「ごめんね……」

涙ながらにそれだけ呟き、しばらくテルの胸で泣くアヤ。

アヤの中では決して言うべきでない感情と位置づけられていたこの気持ちはテルに優しくされて助けられて、テルと二人っきりという状況によって増大し、ついに溢れてしまった。

しかしアヤ自身でもテルがそんな事を考える間もないほど今に必死であるということは理解していた。

両親の真実。

それだけでなく二つの世界を巻き込む陰謀の中心に入っていたテルの頭の中は楽しそうにしていてもどこか引っかかりを残しているのだろう。

それだけのことを背負いながらも寂しそうな表情も苦しそうな表情も見せないテルにショウもアヤも助けられていた。

アヤが過去を取り戻し、心が揺れたときもテルが支えになっていた。

それを言葉にださないもののアヤはずっと感じていたのだ。

そんなテルに対し、恋愛感情を今出すのはテルにとっても答えの出せないものであり、今の関係を崩すだけである。

そんなことを分かっていながらも抑えることのできなかった自分に対し、アヤは涙しているのだろう。

加えて、テルをわずかながらでも苦しめてしまったことにも。

テルもアヤの涙の意味のすべてを理解できずともなんとなく気持ちを察し、ただアヤをそっと抱きしめていた。