「案外簡単そうだな…」

滑る床を抜け、迷路を歩くテルとアヤ。

その背後には機能停止になったマチナ2が転がっていた。

「あんたが倒したの1と2じゃん。今回倒すの12でしょ?」

アヤがそう言って調子に乗るテルに厳しく突っ込む。

「そうだよな…さっきの6倍か。」

テルはそう呟いてマチナ2を見つめる。

「今出遭ったら最悪……あんたと二人で倒せるわけないし。」

「だよなー、なんだかんだでショウは強ぇもんな。」

そう言って歩く二人に更なる邪魔が入った。

再び、壁が動き出したのだ。

「うそっ!」

アヤが驚いてテルにくっつく。

テルも地響きが起こる床でバランスを取ってそれをやりすごす。

迷路は再び形を変え、静かな迷路に戻る。

「止まった?」

アヤは自分からテルにくっついていることに気がつき、静かに離れる。

「また道がぐちゃぐちゃになっちまったな…」

テルはそんなことにも気がつかず上を見る。

エレベーターの矢印を見つけ、テルは歩き出す。

「ねぇ、なんか聞こえない?」

アヤがそう言いながら注意深く音を聞く。

「何か? ……!」

テルはその何かが何であるかを理解して、一時固まる。

その数秒後にアヤの方に駆け寄り、腕を掴むとすぐに横の道へと入っていく。

「ちょっと何?」

アヤがそう言ってひっぱられるがまま走りだす。

するとアヤとテルの背後から大量の水が流れ込んでくる。

水位は1メートルほどだが、飲み込まれればしばらく体の制御が効かなくなるであろう。

「うっそっ!」

アヤは状況を理解し、一気に青ざめる。

「……ってどこにも高いとこねぇじゃねぇか!!」

テルがそう叫ぶ頃には水の勢いが勝ち、ついに二人に追いついた。

テルは覚悟を決め、アヤを抱きかかえると濁流の中に身を投じた。

そこから何回転したのか分からないほど回り、流され続けた。



しばらく経ったその場所にはテルとアヤの姿は無く、静かに流れる水路と化した。



一方、ショウとマユは突如起きた壁の変動により挟み撃ちを回避し、その場から逃げ出していた。

「運が良かったな。」

そう言って迷路を再び歩くマユとショウ。

「ホント何もできなくてすいません……」

マユは自分の非力さに少し悲しくなっていた。

「そんな事無い。現にマユがいなかったら海岸でテルが危なかっただろ?」

そう言ってショウは微笑むとマユの頭をぽんぽん叩いた。