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さやかぁぁぁぁ!!!!

あんた、信じてるって言ってたじゃんかよー!!と、眠いからせりふうろ覚えで叫んでみた。

結局ネカフェで徹夜してしまいました。既製品を手直しするだけなのにな・・・。
いまから電車で帰ります。
昨日は乗り換えのとき昔の管制の教官から電話が来て延々と失恋話を聞いておりました。41歳元気出せよ。涙拭けよ・・・。
そんなんで遅くなってしまい、結局ネカフェ泊まりです。まぁ2回分更新できたからいいか。

なんやかんやで世界観があいまいで、特にししょーにご迷惑をかけている様ですみません。
あくまで最低限の舞台装置くらいにしか時代背景を考えていなかったので、ししょーがあなざーで大変頭を絞って下さっているようで・・・。
あんまりこう、仮想世界を構築するのが得意じゃないんですよね。歴史的に辻褄の合う嘘がつけないし。バーティゴ自体わりとマクロな話ですし。
別にスペクタクルとか戦争アクションとかは私が描かなくてももっと上手い人がいるわけで、ならうちは人間がどうのこうのっていうみみっちい話をピックアップすりゃいいや。みたいなwww

誓が相変わらずゴリラみてぇである。ラプター登場編といい、なんかこう常に野性に目覚めてる。大阪のO嶋君(匿名・同期)の家の柴犬みてぇだ。
でも魔女さやかのテーマ聴きながら書いたのでああいうイメージでお願いします(?)
死なせたら絶望で魔女になっちゃう!!みたいな。みたいなー。

肩こりバキバキだし帰るか・・・。

〈VERTIGO〉1ST PHASE:BOGGY―1

それは、まるで見知らぬ南洋の祭祀のようだった。
腰周りには水筒や弾薬ポーチをいくつも携え、身の丈の半分はある小銃を手に走る男たち。
一歩一歩駆ける度にヘルメットをカチャカチャと鳴らし、蓑のように草を纏っている。
肌にじわりと暖かい日差しと、のどかな昼の時間に突如現れた異様。
罵られているのにピクリともせず、殉教者のような無表情でひたすら苦痛の道に耐え続ける。
くすんだ緑の迷彩服は元の色が分からないほど泥に覆われ、動く度に土が剥がれた。
顔料を練りこんだ油脂で黒く塗られた顔からは、次々と吹き出る汗が濁って落ちる。
頬骨が出るほど痩せこけ、瞳だけが油を塗ったようにぎらぎらと光る。その濁りきった黒い色は、もはや何も映さない。
迷彩服を汗で湿らせた彼らが、臭気を残しながら去っていくのを黙って見送った。
残滓を除けば彼らが幻に見えるほど、平穏な昼休みが戻ってくる。
遠くからかすかに響くのは「柵」の外側を走るトラックの音。近くを走る幹線道路にひっきりなしに行き交っているのだ。
突き当りの向こう、鉄柵のあちら側には、普通の日常が構築されている。
そして「こちら側」にあるのは、軍隊として再構築された世界。
関東に配置された海兵隊および陸軍の、輸送の要として設置された「朝霞飛行場」を擁する和光基地の、これが毎日だ。
埼玉と東京外縁に跨る、広大な基地。様々な庁舎が設置され、指揮の要衝となっている。
大学かと見まごうほどの建造物が並ぶ様は、小さな建物が犇く外側とは一線を画していた。
広い車道の両脇には銀杏や桜などが並び、道行く軍人たちに陰を恵んでいる。
ひとり道を歩く谷川軍曹――谷川 誓(せい)は、若葉の眩しさに目を細めた。
正装である制服姿の者、戦闘服姿の者、昼休みにはいろんな人種が道を歩く。
外界と隔絶された世界の中で、彼らは彼らの日常を作っていた。
誓は道を歩き続ける。ブリーフケースを片手に、時々「佐官」と呼ばれる高級幹部に敬礼をしながら、道を歩く。
道行く人が時々誓に目を留める。
海兵隊と陸軍の基地で、空軍の迷彩服を着ているものは多いとはいえないからだ。
それも一瞬で、すぐに忘れ去ってしまうのだが。
しばらく歩くと、基地内でありながら柵に囲まれた場所にぶつかる。和光基地内には、さらに警備の厳重な区画がある。
箱庭ともいえるその一角は分厚く高いコンクリート・ブロックで囲まれ、中の様子を窺い知ることはできない。
複数箇所の出入り口を通過するには身分証明書と専用のパスの提示が必要で、実弾を装填した銃を持つ兵士が常時そこを警備していた。
それだけではなく、ジャーマン・シェパードを携えた兵士が常に塀沿いを巡回している。
ただ一箇所開放されたゲートは航空機用の出入り口で、飛行場に直結している。
ここには扉はないが、常時複数台の監視カメラが周囲を睥睨していた。ーー基本的に安全を保証されることが前提の基地の中で、である。
1機が数十億と言われる戦闘機の格納庫でさえ、区画を囲うものはないのだ。
通常、武器・弾薬庫やレーダー施設などを除き基本的にブロックのない軍の基地において、この場所は誓にさえ威圧的な印象を与えた。
ずっと塀沿いに歩きながら、3人、2人と連なる海兵隊員とすれ違う。
紺色をベースに、引き裂いた跡のように黒と濃紺を重ねた迷彩服。
軍隊の中で飛び抜けて気の荒いと言われる彼らを流し見ながら歩く。まだ幼さが感じられる兵卒から飄々とした下士官まで、面立ちは様々だ。
それでも、彼らは一様に海兵隊員の顔をしている。まるで、共通の遺伝を継いでいるかのように。
その彼らに、空軍の自分はどう見えているのだろう。
誓の着る、灰色の濃淡をピクセル状に重ねた迷彩服は、春の日射しに白っぽく浮かびあがる。
関東一円を覆う高気圧が、基地内に暖かい春風を呼ぶ。濃い草緑に揺れる沢山のタンポポに、誓は目を細めた。
規則正しく碁盤に設計された基地と、真っ直ぐに整備された道、白い建造物。その合間の草地だけが、軍隊らしくない自然の造形を保っている。
道端の草地は、殺伐とした基地内に小さく季節を運んでくる。昼休みの気だるさに浸りながら、誓はその傍を歩いた。
その先に、コンクリート・ブロックの切れ目に設置されたセキュリティ・ゲートが見えてくる。
民間人の見学はもちろん、議員でさえ理由なしには入れない場所。
ーー飛行開発実験団、略称ADEXg。
和光基地に設置された、陸海空軍を統べる統合軍直轄の部隊。
厚い機密の壁に阻まれたその場所で、次世代の高度な技術は生まれる。
胸ポケットには、誓がそこに勤務する一員であることを証明するパスが入っていた。
ゲートに近づくと、兵士のヘルメットの庇の下の目がこちらを捉える。ぼーっと周囲を見渡すかのような彼らの瞳は、それでいて絶えず異常を探るレーダーだった。
肉眼のX線ゲートが、それとなく誓の爪先から顔までを通過するのを探知する。
車両の突破を防ぐために、いつでもそこには巨大な棘を備えた移動式の障害物が設置されていた。


「どうも」


一等兵に軽く目礼をすると、パスと身分証明書を提示する。胸に縫い付けられたネームに視線が走った。
氏名階級、そして顔写真を確認した兵士がもう一度誓の顔を見た。
顎に目立つ黒子がある。小鼻が赤く、黒目がちな、まだ十代らしさを残す顔。


「お疲れ様です」


おざなりな敬礼をした兵士に、おざなりな敬礼を返すと、誓はゲートを通過する。
そして、壁ひとつを隔てて守られている世界に足を踏み入れた。
ここに来てから数日が経ったが、未だにこの風景には慣れない。
3階程度の、飾り気も全くない白塗りの建造物が続く風景は軍隊的であると言えるだろう。
だが、合間に存在するコンクリート壁の建造物はそれらを軽く凌駕するほどに大きく、窓もないその様は周囲を圧迫するようだった。
高さは5階にも届くだろうか。正方形に近く、備えられたシャッターは閉ざされている。
灰色のコンクリは筋状に黒ずみ、廃虚を思わせる。似たような施設がそこかしこに点在していた。
新型戦車や航空電子機器の実験を行っているのだというが、当事者でない限りどこになにがあるのかは把握できない。
箱庭のなかに漂う独特の閉鎖感と非現実感は、悪趣味なシュルレアリスムの絵画に入ったような感覚を呼び覚ます。
道を歩きながら、海軍の少佐とすれ違う。彼は白衣の技術者と連れ立っていた。
向かいには軍事企業のロゴが入ったツナギを着た技師。だらしない格好の科学者は大学からの出向だろうか。
高級な指揮官と、彼らを気にするでもない技師や科学者の混在する風景は、一種独特の空気を作り出していた。
塀の外と内で変わらないのは、風とタンポポだけだ。
そのまま飛行場に向かって歩み続けると、航空機セクションになる。
飛行場エリアに走る道に沿って、かまぼこ状の格納庫がいくつも連なるのが特徴的だった。
アリーナひとつ分はある格納庫は日射しに光り、カーブした屋根から立ち昇る熱が空気を歪めている。
その上空で風に乗るカラスが、塀や格納庫に歪められた風の動きを忠実にトレスしていた。
風洞実験だ。誓は小さく呟く。
ちょうど道路の中央を飛行場に向け、牽引車に曳航された偵察ヘリコプターが向かう。
川魚のような、丸みを帯びてすらりとしたフォルムはOHー1だ。川崎重工が開発し、陸軍で運用されている現在も尚改修が行われている。
ブラックの陸軍塗装を施されてはいるが、機体はすんなりとした優しげな印象を与えた。
それを見送り、誓は周囲と同じく無個性な建造物に入る。
今時軍隊にしかないリノリウムの床が、よく磨かれて廊下の景色を映していた。
ふと、誓はそこに珍しく漂う土と汗の臭いを感じ取った。湿った土の塊がぽろぽろとそこかしこに落ちている。
生の土の臭いと、薄まってもムッと湿り気を残す汗の臭いが混じり、見えない軌跡を残していた。
それを追いかけると、階段を上がり、廊下の中程に行き当たる。パイロットの更衣室だ。
入り口には、表面に乾いた泥と湿った泥がこびりついたナイロンのバッグが置かれている。膨らみが大きいのはヘルメットバッグだからだ。
数枚のワッペンが貼られ、それはNATO軍の多国籍訓練参加や大規模演習参加などの持ち主の戦歴を示していたが、それも今は泥にまみれている。
時計を見れば、まだ10分ほど時間があった。掃除用具入れから箒を取り出し、誓はとりあえず廊下を掃き始める。
この部隊に出向して数日、誓が関わったパイロットは彦根という名の中尉のみだ。鞄に貼り付けられたワッペンには、「K.SAK」という刺繍がされている。
誓のセクションにはふたりのパイロットがいると聞いていた。恐らくはこの鞄の持ち主なのだろう。
見たことのないワッペンに、つい箒を持つ手を止めて見入ってしまう。
弾痕の穿たれたトランプがあしらわれたワッペンには、周囲に「13th NATO Joint Aviation Training ALASKA:AH-64D JOKER FORMATION」と記されている。
洒落たデザインのものや、アラビア語が記されたもの、ヨーロッパの国々の名前が入っているものなど、ヘルメットバッグはワッペンに異国を旅した記憶を留めていた。


 
「いいなぁ」


 
ぽそりと呟きが漏れた。こんな狭い塀の中にいながらも、パイロットには空を自在に越えてゆける力がある。
もちろん、それは揚力と重力、推進力と抵抗力の物理法則の合成にすぎないのだが、誓には人類本来の絶対不可能を打ち破る果てなき夢のシンボルに思われた。
空へ憧れた人間にとって、飛行は単なる事象を超え、まるで力強い魔法のように映る。ベルヌーイの定理を初めとするいくつもの物理現象を結晶して、空に奇跡は起こるのだ。
土の塊をちりとりに集めながら、誓は窓の外を見た。滑走路に接近し、ギリギリに降下をするオン・ショート・ファイナルのCー2輸送機が建物の向こうに消えていく。
後に残る甲高いタービン音。巨鯨のように丸みを帯びた機体のCー2輸送機は、和光を本拠地に活動しているため日中はひっきりなしに飛んでいる。
その合間を縫うように、人員輸送ヘリコプターが離着陸を繰り返していた。
ついぼーっとしそうになるのに気付き、誓は掃除を再開した。
ちりとりに集めた土をゴミ箱に捨てていると、階段を登る足音に気付く。
ゴツンゴツンと響く重い足音は、丈夫で靴底の厚いコンバット・ブーツの響きだ。
その音がする方を向くと、ちょうど階段を上がってきた男と目が合った。
ここ数日ですっかり記憶した栗毛の短髪。よく日に焼けた肌に、くしゃっと笑うとできる目尻の皺。


 
「おー、誓ちゃん!もうあいつと会った?」


 彦根中尉だった。
海兵隊所属のパイロットで、誓はもう既に世話になっている。


 
「この鞄の方ですか?」


 
問い返すと、そうそう、と調子良く返事がくる。
何だよあいつ、と舌打ちした彦根が更衣室を覗き込むが、そこにも「あいつ」は居ないようだった。
格納庫かな、と呟いた彦根が誓に苦笑を投げかける。


 
「ちょっとクセのある奴だけど、まぁあんまり気にしないでいいから」
 


はぁ、とあいまいに相槌を打った誓に、彦根はまた笑う。
窓から差し込んでくる光が、その笑顔を明るく照らした。それが、彼自身の温かみをも感じさせる。
敵にとっては地獄の使者と言われる戦闘ヘリコプターのパイロットにはまるで見えない。
じゃー格納庫行きますか、と指示する彦根に誓は従った。
訓練から帰還したパイロットについていろいろと喋る彦根に相槌を打ちながら、階段を下る。
そして格納庫に入った途端、誓は異変に気づいた。
おおよそバレーコート4面はある格納庫が、狭く感じる。昨日までここにあったのは、戦闘ヘリコプター1機だけであった。
それが今日は、2機に増えている。同じ紺色の迷彩の、同じ機種。

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