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コミティア信管表紙絵

アニメの原画とか好きやねん

浴衣はポストカードとして救済

肝臓が腫れている気がする

アルコール耐性の下がるステータス異常を伴った攻撃を受けたのだろうか

無修正(後半すげ替え)

望まずしてメイキング公開になってます。今回はレスポンスや見直しを基に後半すげ替え。
階級章剥がしという新しいプレイがここに生まれた。



誓は、5分前からパソコンの前で微動だにせずにいた。右手にはマウスを持っているが、クリックの音は一度も聞こえない。
パソコンの画面が、黒く落ちてスクリーン・セーバーに変わる。
時折の瞬きがなければ、生きているのか分からない。催眠をかけられているかのようだ。
不在間の書類仕事を片づけていると言ってはいるが、一文字たりとも進んでいないのは明らかだった。
すっかり日が暮れて、窓の外には滑走路を縁取る灯火が浮かぶ。事務所には、他に誰もいない。
リポビタンDを飲みながら、報告書を片付ける佐久の右腕には、赤白の横縞の当直腕章が留められている。
帰りたくても帰れない佐久をよそに、誓はスクリーン・セーバーの変化する曲線を目で追い続けている。
「何もしないなら帰れよ」
自分の声音が少し険を帯びた。
誓は反応しない。瞳孔だけは、微妙に運動している。
化粧気のない顔は、青白い。
「おい」
もう一度呼びかけると、二度誓は瞬いた。やや間を開けて、唇が動く。
「・・・カタカナ半角に変換するの、何でしたっけ」
「あ?」
お前、そんなこと何分も考えてたのかよ、と言うと、誓は無言で頷く。
元々何を考えているのか分からない奴だったが、帰ってきてからの誓は明らかにおかしかった。
魂が抜けて、人格がどこかにいってしまったような気さえする。
「いいから今日は帰れ」
ファンクション・キーがどうのという問題ではなかった。
困ったように眉尻を下げた誓は、のろのろとキーボードを叩き始める。
それでも、残業はしないに限る、と無理やり仕事を片付けていた以前のタイピングとは比べものにならなかった。
佐久は、目の下がピクピクと動くのを自覚した。いつになく、苛立つ。
気を紛らわすために、リモコンでテレビを点けた。ニュース番組では、今日もどこかで起きた事故と強盗と殺人を報じている。
はあ、とあからさまにため息をついて佐久はパソコンに視線を戻した。
逃げるように目を逸らした誓は、黙ったままだ。
横目で軽く睨んだ佐久は、俯いた誓の口元の肉がわずかに震えていることに気付いた。
言葉を押し殺すときの誓の癖だった。
それさえも抑え、机の上で拳を握りしめ、不意に息を詰める。
それを境に、乱れていた呼吸が静まった。
時刻が、ちょうど8時を過ぎる。
「番組の途中ですが、ここで緊急ニュースです。先程、アメリカ国防総省のキャスター長官が緊急の記者会見を行いました」
アナウンサーが慌ただしく原稿を捲る。ローカルの行事を放送していた番組の画面が、本土の記者会見会場に切り替わる。
オールバックの、やや肥えた純アングロサクソン風の男が、マイクの前に立つ。
誓はなぜか、静かに目を閉じた。その表情は、判決を告げられる瞬間の被告人のものだった。
シャッターを切る音と、カメラのフラッシュがが連続する。画面の下に、テロップが表示された。

「アメリカ軍、中東北部でテロ・グループのリーダーら8名殺害を発表 6日深夜、キャンプ・ヘンドリクセン襲撃事件首謀者ら」

一瞬、画面の中の男の英語も、シャッターの音も聞こえなくなる。
二度、テロップを読んだ佐久は、瞬きをすることも忘れたまま立ち上がっていた。
一切を明かされず、そして長時間極度の負担を強いられる程に重要な任務。
誓が、ゆっくりと立って、まぶたを上げる。
顔は陶器のように青白く冴え、瞳孔は穿たれたように真っ暗だ。
自分を恥じるかのように、その目は伏せられたままだった。
「申し訳ありません、少尉殿」
誓の肩から力が抜けて、その拳が弛む。
「全てが終わって、過去になったということを認めている自分を、こんな形で突きつけられるのが怖かったのです」
心拍数が上がる。佐久は、目の前が薄暗くなり、何故かひどいめまいを感じた。
「少尉の前でなければ、自分が崩れ落ちてしまうような気がしていた。・・・弱い人間で、人間で、申し訳ありません」
その腕が、足が、身体からボトボトと千切れて落ちてしまうような錯覚を視る。
どこまでも耐えることを自らに課し続けた誓。 表情に差す影は、黒ずんでいた。
「バカじゃねえか」
思わず吐き捨てた佐久は、表情が強ばるのを自覚した。冷たい怒りがこみ上げる。
死者に縋り、しかし生者に頼らずにはいられない不実に腹をたてた。
「来い、誓」
いっそのこと、壊してしまいたい。
そんな考えが、不意に佐久の中に芽生える。そうすれば、何に縋ろうが、何を信じようが、関係なかった。
暗い情熱が吐く息を熱くしていく。
「来いよ」
我々は正義を履行し、としゃべり続けるニュースの中の男の言葉が耳を素通りする。
糸が切れたように立ち尽くす誓の手首を、有らん限りの力で掴んだ。骨の関節に親指の骨が食い込み、血管の膨らみの脈拍が止まる。
――我々は正義を履行し、・・・
その言葉が頭の中で繰り返す。
体を引き寄せ、腕を掴んだ。下らない理論も、虚飾も、握り潰してしまえばいい。
密着した身体に、柔らかい全身の重みが伝わる。
「誓」
耳元で、名前を呼んだ。守谷の「いない」誓の中に、それは滴って浸透していく確信があった。
攻撃。駆逐。占領。海兵隊員の理論と本能が佐久を動かす。
下を向いた誓の顎を掴み、わずかに眉根を寄せたその顔を見据えた。
そして、襟元の、軍曹の階級章を掴む。
指の先に力を込め、それを剥ぎ取った。ブチブチと音が響き、切れた糸が襟元に残る。
「こんなもん、要らないだろ」
「少尉」
階級章の堅い布を握りつぶした。
息の漏れるほうへ、唇を寄せる。

名前を呼んでくれて、ありがとう

その囁きを聞きながら、佐久は階級章を投げ捨てた。

無修正(新刊)

コミティア新刊本文のできたてです。
ここからかなり修正追加して入稿になりますが、基本的にはこういうお話。
いつもと話の構成を変えてみた、というか全然雰囲気も違いますね。
先日の浴衣の谷川はこのためだったんやー!!!
more...!

orz

純正だからな・・・
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