どうしてこうなった……
もっとほのぼのっと
させるつもりだったのに。
なんだか、違う。
今回ですね
自分に課した制限は人称を使わないです。
「私」とか「俺」とか
「彼」とか「彼女」とかね。
使わないでちゃんと書けるか試してみた。
だからもしかするとわかりにくいかもしれない。
こればっかりは
自分では完璧には気付けないからなあ。
まあ
私は自分で書いたものの指摘、批評、校閲は完璧よ!
私の完成品によくないところなんて皆無。
なんて思ってたら
それはそれで問題なんだけどね(笑)
ログイン |
徒然なるままに 日暮らし 液晶に向かいて 心に移り行く由無し事を そこはかとなく書きつくれば あやしゅうこそ 物狂おしけれ
どうしてこうなった……
自動販売機の照明で息がかすむ。冷たくなった指先で財布から硬貨をつまみだすと、投入口に入れていった。硬貨の落ちる音がして、ボタンにランプがともる。両足はその場で小さく足踏みを繰り返していた。
缶の落ちる音がやけに大きく聞こえた。取り出して手で包みこみながら、販売機の前を後にした。
「つめて」
ジーパン越しに腰掛けた木の冷たさが伝わる。後ろの壁に背をもたせ掛けて、上を見る。ホームの屋根越しに見える空はまだ暗かった。街の街灯や二十四時間営業の店や、そんな明かりのせいで星は見えない。缶に触れる両手の指は、温まって痺れはじめていた。
空から線路へ目を戻すと、缶のタブに指をかける。力を込めようとしてやめた。かわりに両掌で挟んで転がすと、中身が揺れて新しい熱が皮膚に伝わる。刺すような刺激も冷えた体には心地よかった。
遠くに原付のエンジン音が聞こえた。
大きく身を乗り出して、線路の奥を覗き込む。腕の時計を眺めて長い息をついた。前かがみのまま両手で缶を握って、頭を垂れた。
「のっ」
それは時計やパソコンなんかの、いわゆる機械音に似ていた。短くて高い音が聞こえて、思わず指先に力がはいった。
「の、おー」
頭は垂れたまま、顔を左へ向ける。
蛍光灯は冷たい光を落とす。
ちょうど二人分スペースを開けて、子どもがいた。深く腰掛けて、片足ずつ前後に振って、じっとこちらを見ている。数秒見つめあったあと、視線をそらさないようにしながら体を起こす。
そこから動くでもなく、ただこちらを見ながら足を振る姿に肩の力を抜きかけたとき、小さな顔は歯を見せて笑った。
笑い顔意外の表情なんて持っていないような、変に浮いた顔だった。
それからゆっくりと横に開いた口がすぼむ。閉じきる前に言葉を発しようと開く。そこでふいに、子どもの目の中に映っていた光が消えた気がした。
「――」
動いた口から出た声は、電車のブレーキ音にかき消されていた。車輪とレールがこすれるその、耳障りな音が消えないうちに、立ち上がる。目はドアの向こうの暖かそうな光を見ていた。
空気の漏れる音を立ててドアが開いた。
「の」
踏み出そうとした足を声が止める。思いのほか近くで聞こえた声に、引きつった声が出そうになる。顔を向けるとすぐ隣で子どもが、缶を握った手を指差していた。
缶を見て、子どもを見て、手をほんの少し上にあげる。これか? と尋ねるように首をかしげると、子どもは缶を見たまま小さく頷いた。一瞬ためらってから手を伸ばし缶を渡す。受け取ったのを確認すると、足早に電車へ乗りこんだ。
背中でドアが閉まる。揺れとともに動き出したところでやっと、自分が震えていたことに気がついた。