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戦国BASARAの瀬戸内組を愛するブログです。ブログ、サイト共々、二次創作が中心ですので、ご注意ください。
彼にとっては小さな諍いも、弟にとっては”時期当主としての物言い”と映るようだ。
「そーいや、豪ちゃん、嫁ぎ先決まったんだって?」
「慶次、口にご飯を入れたまましゃべるんじゃありません」
「まつ姉ちゃんの沢庵うまいから、ついつい飯が進んじゃってさあ。で、どうなの?」
「うん、播磨の宇喜多殿に嫁ぐことになった」
え、と慶次は箸を止めた。
「まさか、宇喜多直家?」
「いや、違う、息子の秀家殿だ」
「…利、宇喜多の評判、知らないわけじゃないだろ」
「もちろん、知ってる」
「だったら…!」
「慶次」
まつのしゃもじが、慶次の目の前に突き出された。
「これは犬千代さま…前田利家様がお決めになったこと、あなたにもわかりますね?」
「でも…!宇喜多直家がどんなやつか、利もまつ姉ちゃんも、知ってて嫁にやるのかよ…!?」
残忍な陰謀の数々で悪名高い、梟雄・宇喜多直家。
舅を滅ぼして領土拡張の足がかりを得、対立する領主は暗殺と謀殺を繰り返して抹殺。
国内の有力な領主と姻戚関係を結び、油断させては攻め滅ぼした。
生涯における敵対者のほとんどを謀殺によって葬った男だが、これでなかなか実戦も強かった。
「慶次、よくお聞きなさい」
まつが声を潜めた。その眼差しは、いつになく厳しい。
「このたびの婚姻は、前田家の一存ではないのです」
慶次は、息を飲んだ。
前田家の一存ではない、ということは、すなわち主家たる織田信長の意向である、と暗に示していた。
「信長公はゆくゆく、西国を攻められましょう。その時、足がかりとなる同盟国が必要です」
そして、その相手となる国主は、時勢に聡く、織田氏に服することに利を見出すような人物でなければならない。
そのためには、大国であっては都合が悪い。
「だから、宇喜多か…」
播磨宇喜多氏は、西に毛利、東に豊臣という大勢力を抱える。
もしも宇喜多が織田と結べば、織田にとって豊臣への大きな牽制となりうる。
だが、それは宇喜多にとって諸刃の刃だ。
豊臣が先制を仕掛ける可能性は十分に考えられるし、毛利とて自領に不利となる動きがあれば出兵を辞さないだろう。
それでいいのか、とは、慶次は言えなかった。
それが武家の習い、それが政である。まして、主命。逆らうことなど考えられない。
「豪ちゃん、幸せになるといいな」
政略結婚に異議を唱えるほど、慶次は子供ではない。その権限もない。
従妹の幸せを願う言葉程度しか、言えない。
それでも、利家やまつは、嬉しそうにうなづいてくれた。
「宇喜多秀家殿は、人柄すぐれた若君と聞いています。おさおさ、豪を粗略に扱うようなことはなさいますまい」
「某もそう聞いている。だから、安心して送り出してやってくれ」
「当たり前だろ、利とまつ姉ちゃんの家族だもんよ」
しがらみの多い立場を捨てて自由に生きるということは、立場のある誰かの力にはなれないのだと、今まで幾度となく思い知らされてきた。
それでも、その自由にして苦しい道を行くのが、慶次なのだ。
一歩、踏み出そうとしたとき――。
目の前に鋭い切っ先が閃いた。
「動くな、娘」
小さな白い顎の下で交差する刃。
頭の上から降ってくる声が、いつきを羽交い絞めにする。
「元春」
先ほどから微動だにしない毛利元就が、何も変わらぬ声で言葉を発した。
「その小娘を奥州へ送り返せ」
「他の者は?」
「斬れ」
いつきの頭が、しびれた。
「ま、待ってけれ…」
目の前が真っ白になった。
「助けてやってけろ!おらは死んでもいい、何でもするから…!村のみんなは助けて――」
「下衆が。疾く失せよ」
蓑がものすごい力でつかまれたかと思うと、小柄ないつきの体はぬかるみを引きずられていった。
「待ってけろ!やめてけれ、助けてやってけれ!お願えだから!」
「無駄だ」
顔の見えない、自分を引きずる侍は言った。
「みんな死んだ」
びくり、と動きを止めた少女を、元春は自分の前に引き据えた。
緑のお侍に似ている、と、しびれた頭の片隅で、いつきは思った。
「帰れ。そして、二度と戦うな」
軽く、突き放すように肩を押された。
よろけたが、転びはしなかった。
本当に、突き放すような動作だった。
「戦に出るなら殺す、戦に出れば死なせる。それが戦だ。できんのなら、二度と、戦場へは戻るな」
それだけ言うと、彼は去っていった。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 9月11日 |
血液型 | A型 |