スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

光就 ss

BASARA光就。

久々にBASARAをプレイしたら、元就様と変態だけが同名の武器を所持してることに改めて萌えた。
続きを読む

太陰

彼にとっては小さな諍いも、弟にとっては”時期当主としての物言い”と映るようだ。

「お気をつけ下さい、かような時勢にございますゆえ」

そっぽを向いて言う、弟の物言いに苦笑する。

「お前は知らないのだよ」

自身ではない、自身では止められぬ、「人を陥れ、殺す」という行為に対する畏れ、怯え、押し潰されそうなほどの罪悪感。いけないと解っていても、その恐怖を抱かずにはいられない者が、この世には確実に在るということを。

「それでいいのだ」

自分ひとりが恐れを背負い、自分ひとりだけでも罪業を知覚していれば、それで赦されるような気もする。
武家の身で、このような虚しい、実の無い感慨を抱く愚かさを、自分でも理解できない。
それでも、己が足元に開く冥府の顎を見ずにはいられない。
それは、いつか瘴気となって己の足を焼き、膝をつけば骨を灼き、業火で以て焼き滅ぼすのだろうか。

「これが我が罪…」

その時が来るまで、目を閉じているがいい。
そして目を開けたとき、暗く血塗れた視界には、ただ己だけが映っていればよい。
他の誰も、罪を罰する最も罪深い手に捕らわれることのないよう。

ただ、己だけが禍を視ればよいのだ。



「ごめんなさい…」
羽織の裾を握り締め、むせび泣く弟の姿が不思議でならない。
「ごめんなさい…もう、あのようなことは言いません…ですから、あのようなことを仰らないで!」
泣きながら謝る理由もわからない。
そのように責めることをしただろうか、追い詰めることを言ってしまったのだろうか。
慰めるように肩を叩いてやれば、弟はますます暗い顔になった。

弟は、兄の足元に、優しい手に、冥府の闇が絡み付いているのを見た気がした。

「兄上…あなたは誰よりも早く、誰よりも罪を負って死にたいのですか…」
「そんなことはない。父上やお前たちを悲しませたくはない」

笑う眼差しに、確かに死の影を見てしまった。

願わくは父や兄弟の被る禍を全て我が身へ移したまえと、哀しき暗い祈りを胸に落とす兄の、確かに流れ落ちる死の闇を。



------------


毛利隆元のイメージ。
強い責任感の反面、お市と同じような「罪の意識」を抱いている人物として描いています。
ただ、隆元の場合、その罪の意識に逃げるのではなく、畏れながらも内包し、逆に家族や家、国のため全てを背負い、災いを我が身に受けようとする、自己犠牲の強すぎる人物だとイメージしています。

ここでの「弟」は隆景です。
穏やかなイメージの強い隆景ですが、別家の当主であり、優秀であるがゆえ、方針の対立してしまう存在ではないかと。
逆に、元春のほうが隆元を立てることが多いと思っています。

下書き



通常、土佐から安芸へ向かうのは、土佐から出航して、一路海上を行くのが最も手早かった。
しかし、今回、元親はいったん伊予へ出て、瀬戸海でもっとも神聖なる島とされている大三島、そして厳島へ参拝してから、安芸へ向かうことにした。
いかな理由があったとしても、神の島を数度にわたって戦場としたことで、長宗我部氏は瀬戸内海での信望を傷つけている。

今も昔も、海上という特殊な場所で生きる者たちにとって、信仰とは命そのものであるといってよかった。
無数の島嶼を擁する瀬戸内海において、その信仰を尊ぶことは、為政者に要求されるひとつの才覚でもあった。



-------------


長編で削った部分です。
寺社との結びつきも、この時代の情勢を伝える大切な要素になるかと思ったのですが、肝心のシーンに到達するまでに長くなりそうなので、割愛。
いずれ、長編の後序もしくは短編として上げるかもしれません。

この時代の戦国武将の例に漏れず、元親も多くの寺社を修復、再興しています。
土佐国分寺など、こぢんまりとした品のよい佇まいがいいですよねv


前田家

「そーいや、豪ちゃん、嫁ぎ先決まったんだって?」
「慶次、口にご飯を入れたまましゃべるんじゃありません」
「まつ姉ちゃんの沢庵うまいから、ついつい飯が進んじゃってさあ。で、どうなの?」
「うん、播磨の宇喜多殿に嫁ぐことになった」
え、と慶次は箸を止めた。
「まさか、宇喜多直家?」
「いや、違う、息子の秀家殿だ」
「…利、宇喜多の評判、知らないわけじゃないだろ」
「もちろん、知ってる」
「だったら…!」
「慶次」
まつのしゃもじが、慶次の目の前に突き出された。
「これは犬千代さま…前田利家様がお決めになったこと、あなたにもわかりますね?」
「でも…!宇喜多直家がどんなやつか、利もまつ姉ちゃんも、知ってて嫁にやるのかよ…!?」


残忍な陰謀の数々で悪名高い、梟雄・宇喜多直家。
舅を滅ぼして領土拡張の足がかりを得、対立する領主は暗殺と謀殺を繰り返して抹殺。
国内の有力な領主と姻戚関係を結び、油断させては攻め滅ぼした。
生涯における敵対者のほとんどを謀殺によって葬った男だが、これでなかなか実戦も強かった。



「慶次、よくお聞きなさい」
まつが声を潜めた。その眼差しは、いつになく厳しい。
「このたびの婚姻は、前田家の一存ではないのです」
慶次は、息を飲んだ。
前田家の一存ではない、ということは、すなわち主家たる織田信長の意向である、と暗に示していた。
「信長公はゆくゆく、西国を攻められましょう。その時、足がかりとなる同盟国が必要です」
そして、その相手となる国主は、時勢に聡く、織田氏に服することに利を見出すような人物でなければならない。
そのためには、大国であっては都合が悪い。
「だから、宇喜多か…」
播磨宇喜多氏は、西に毛利、東に豊臣という大勢力を抱える。
もしも宇喜多が織田と結べば、織田にとって豊臣への大きな牽制となりうる。
だが、それは宇喜多にとって諸刃の刃だ。
豊臣が先制を仕掛ける可能性は十分に考えられるし、毛利とて自領に不利となる動きがあれば出兵を辞さないだろう。

それでいいのか、とは、慶次は言えなかった。
それが武家の習い、それが政である。まして、主命。逆らうことなど考えられない。

「豪ちゃん、幸せになるといいな」
政略結婚に異議を唱えるほど、慶次は子供ではない。その権限もない。
従妹の幸せを願う言葉程度しか、言えない。
それでも、利家やまつは、嬉しそうにうなづいてくれた。
「宇喜多秀家殿は、人柄すぐれた若君と聞いています。おさおさ、豪を粗略に扱うようなことはなさいますまい」
「某もそう聞いている。だから、安心して送り出してやってくれ」

「当たり前だろ、利とまつ姉ちゃんの家族だもんよ」



しがらみの多い立場を捨てて自由に生きるということは、立場のある誰かの力にはなれないのだと、今まで幾度となく思い知らされてきた。
それでも、その自由にして苦しい道を行くのが、慶次なのだ。

 

下書き(元就、いつき。高松城水攻戦)

一歩、踏み出そうとしたとき――。
目の前に鋭い切っ先が閃いた。
「動くな、娘」
小さな白い顎の下で交差する刃。
頭の上から降ってくる声が、いつきを羽交い絞めにする。
「元春」
先ほどから微動だにしない毛利元就が、何も変わらぬ声で言葉を発した。
「その小娘を奥州へ送り返せ」
「他の者は?」
「斬れ」
いつきの頭が、しびれた。
「ま、待ってけれ…」
目の前が真っ白になった。
「助けてやってけろ!おらは死んでもいい、何でもするから…!村のみんなは助けて――」

「下衆が。疾く失せよ」


蓑がものすごい力でつかまれたかと思うと、小柄ないつきの体はぬかるみを引きずられていった。
「待ってけろ!やめてけれ、助けてやってけれ!お願えだから!」
「無駄だ」
顔の見えない、自分を引きずる侍は言った。
「みんな死んだ」
びくり、と動きを止めた少女を、元春は自分の前に引き据えた。
緑のお侍に似ている、と、しびれた頭の片隅で、いつきは思った。
「帰れ。そして、二度と戦うな」
軽く、突き放すように肩を押された。
よろけたが、転びはしなかった。
本当に、突き放すような動作だった。
「戦に出るなら殺す、戦に出れば死なせる。それが戦だ。できんのなら、二度と、戦場へは戻るな」
それだけ言うと、彼は去っていった。

 

前の記事へ 次の記事へ