いつも通り。
西園寺と浅倉のリズムは的確で、しっかりとしている。上に乗っかる私と杉原も大丈夫。

いつも通りだ。


―いつも通り




「ありがとうございましたっ!」

曲が終わり、杉原はいつもの通り元気よくそう言い、渚らの出番は終わった。ばっと片し、エフェクターボードを抱え控室に戻るなり、朝倉が、

「片付けは後でもいい。とにかく、見に行こう」

と言い出した。ベースをケースに仕舞うなり、エフェクターを片さずにそそくさと客席の方へ姿を消す。

「ウチは…いいや、パス…」

杉原はというと、柄にもなく低いテンションである。終いには、イヤホンをつけて椅子の上に体育座りしてしまった。

「西園寺は?」

「行く」

そう言い放つと、西園寺もペダルの後片付けそっちのけでそそくさと足を客席に向ける。

「あ…ちょっと」



客席に着くと、もうセッティングは終わっていた。
渚が一息つくと、SEが変わり、演奏が始まる雰囲気となった。
すると、3人の男ががすっと入ってきて、それぞれが楽器を手にとった。そして、最後に一人女の子が姿を見せ、ギターを持ちマイクの前を陣取った。

「こんばんは、wwwです」



圧巻だった。
ボーカルの声量、声質、歌い方、
ギターの歪み、切り返し、技術

存在感。

まさにそのものだった。
気がつくと、その世界に引きずり込まれているような、そんな感覚に陥っていた。


6曲、30分弱
もっと長かった気がするが、さっきから時計の針は半周ほどしか回ってなかった。

「…神崎」

突然西園寺によばれ、渚は体をびくんと震わせた。

「ど、どうしたの?」

「エフェクター、片そうよ」




心ここにあらずだった。そのせいで作業はなかなか進まず、暇をもて余した西園寺と浅倉はパッドとスティックを使ってリズムの練習をしだす始末。杉原は、さっきと変わらず引きこもっていた。

「あの…浅倉さん…ですよね…」

ふいに声をかけられたのと、いいところで止められたせいで若干怪訝そうな顔をして後ろを振り向くと、そこにいたのは、


「wwwの…ベースさん?」



続く