俺が多分小学2年生頃のこと。 毎年お盆には親の実家にいっていた。俺は新幹線に乗れるので楽しみにしていた。 そこは典型的な田舎で、水田が広がる農村だった。 家の裏に用水があった。なみなみと水が流れる用水で、子供心に、水深が2メートルくらいあるのが分かる迫力のある小川だった。 地面と変わらないくらいのところに水面がある、たっぷりとした水が流れていた。 俺は、少し年上のいとこの女の子と一緒にその用水端でセリを摘んでいた。 ふと、その女の子が、「水の中に人がいる」と言った。 見ると、確かに人の顔がにごった水の中からこちらを見ているのが見えた。 緑色というか灰色というか、そんな水面のスレスレ下に、白い顔があって、しっかり俺たちを見ていた。そして、たっぷりとした水量をものともせず、そこにとどまっていた。 いとこのおねいさんは、黙って俺の手を引っ張ってそこから逃げた。 それ以来、水恐怖症になった。