放課後完二と一緒に愛家に入ろうとしたら、警察に声をかけられた。
噂になってるカツアゲ集団について訊きたいことがあると。
というか、頭から完二が関わってると決めつけている様子に腹が立った。
俺が里中と愛家に行った時も声かけてきたよな。
完二といるからおまえも一味だろうと言われて本当に腹が立った。
証拠もなく警察署に連れていこうとして、証拠がないんだから任意のはずなのに、完全に補導前提の態度だ。
悪くないんだから二人とも堂々としていたら、「罪の意識もない」とか言い出した。
どうも、いつもの小学生男子といるところを見て、誰かが警察に告げ口したらしい。
…そんなもん、何やってるのか本人に訊けばいいじゃないか…。
押し問答していたら、当の男子が通りがかった。
男子が完二にマスコットを作ってもらっていると言ったのに、警察はその言い分も信じようとしなかった。
そうしたら、完二は、男子や俺を嘘つきにするわけにはいかないと、堂々と、自分が本当にマスコットを作っている、しかも8個も、と告白した。
警察はバカにした態度になったが、完二は怯まなかった。
ああもう何であいつあんな格好いいんだろうな!
惚れ惚れしていたら、完二母もやってきた。
完二母は最初から完二のことを信じて、警察をあしらっていた。当然だ。
当然だと思うのに、完二はビックリしてたみたいだ。
泣いてた。
泣いてスッキリしたみたいだ。
よかった。
ろくに証拠固めもせずに先入観だけで仕事しようとするアホ警官と叔父さんが一緒に仕事してると思うと、不思議だ。
叔父さんの努力だけじゃなかなか事件が解決しなかったわけだなあ。
チビッコ探偵も大変だったろうな。

そして夜は、秀のところに行った。
今日、秀の誕生日だった!
休んだりしなくてよかった!
慌てて、陽介に頼んでケーキを入手してもらった。陽介はケーキばかりでなく、いつものみんなも連れて秀の家まで来てくれた。陽介エクセレント!
そういうわけで、みんなで秀の生誕を言祝いだ。
歌ったり電気消えて大変だったり、盛り上がった。
でも秀が途中、「生まれてきてよかったのかな」などと言い出し、みんなからバカバカ罵倒されていた。
あいつあんなに大勢にバカって言われたの初めてだろうな…。でもバカ。
秀は嬉しかったんじゃないかな。
あんな言葉に、みんながすかさず怒っているのが、俺も嬉しかった。すごいなと思った。

みんなが帰った後、秀が、この間のことを説明してくれた。
あいつ、学校でカンニングしたんだそうだ。
それがばれて、学校にも母親にも怒られたって。
前に話してた転校生のことが引っかかってたらしい。スポーツもできるし、みんなに人気があって、その上勉強でまで負かされて焦っていたと。
何で秀の母親は、恥ずかしいなんて言ったんだろう。
全然話も聞かなかったみたいだ。
秀の言葉を聞きながら、俺は昼間の完二母のこと思い出してた。
完二母は完二のこと信じてた。完二がどうして暴走族潰したのかってことも、事情知ってた。
でも秀の母親は、どうして秀があんなにまで一番を取らなくちゃいけないと思ってたか、どうしてカンニングをしてしまったか、わかってない。
秀は俺にすごく謝ってた。
それが救いだと思う。俺のじゃなくて秀の。秀は、俺が秀の力になりたいと思って、頑張って勉強教えてたのはわかってくれたんだろう。
だからごめんって言ってくれた。俺の努力とか、秀に対する信頼を裏切ったことを謝ってくれたんだと思う。
母親ともちゃんと話すと言っていた。
俺はもうちょっと早く、もっと突っ込んで秀の話を聞くべきだったな。
辛そうなのはわかってたけど、秀自身が解決しなくちゃいけないって、悠長にし過ぎてた。母親のこと責められん。

今頃秀は母親と話してるかな。
本当に今日、陽介たちも来てくれてよかった。
また来て欲しいと言われた。
秀には味方がいる。大丈夫。秀もわかってる。ちゃんと話せるはずだ。

上手く気持ちが伝わること祈ってる。秀も秀のお母さんも頑張れ。