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なくなった人々をしのぶ日(曇り)

広辞苑より。
秋分ってそういう日だったのか。知らなかった。


河原でひさ乃さんに会った。相変わらずの喪服。
「死神は人を神様のもとに連れて行く者」と教えてくれた。
そして「死んでいく人の家族の味方」だと言われて、驚いた。
死神は人を殺す者かと思っていた。でもひさ乃さんは、必ず神さまに魂を届けてくれる約束のようなものだと思っているらしい。
人が死んだらどうなるのか?
神さまのもとに行けて、そこが安らげる場所だったら、家族は少しは救われるんだろうか。
俺はまだ身近な死を体験したことがないからわからない。
でもそれが救いになるのはわかる気がする。
ひさ乃さんはどうして俺にそういう話をするんだろう。
いつも悔やんでいるような言葉を口にするのが気に懸かる。


夜は病院バイト。
とうとう小夜子さんが倒れた。
でも少し休んだだけですぐ仕事に戻ろうとしていた。
凄く焦って、思い詰めているのがわかった。
人の命を救うためになりふり構っていられないと言っていたけど、でも結局倒れてしまっては、元も子もない。
闇雲に動き回っていれば何かが変わると思い込んでいるふうだった。
それって結局、何も考えたくないだけなんじゃないだろうか。
そう思って、「小夜子さんは逃げてるだけだ」と言ってしまった。
ひどいことを言ってしまった気がする。
でも小夜子さんは我に返った様子で、「自分が楽になりたかったんだ」と呟いてた。
そういう自分を責めてるようだったけど、でも、小夜子さんはちっとも楽になんてなれてなかったように見える。

少しだけ気持ちがわかる。あの事件で、誰かがテレビに入れられるのを止められずに、なかなか助けられない時、何かしていないと不安になる。それで無茶な戦い方をして、傷を受けるほどに、「自分は頑張っているんだ、誰かを見捨てているわけじゃないんだ、助けたいんだ」と必死になって自分に言い訳をする。誤魔化してる。
本当はそうやって馬鹿な戦い方をするほど、助ける道からは遠回りになってしまうのに。
焦らず確実に、と直斗の時に強く思った。

小夜子さんがもう少し休んでいくと言ってくれてホッとした。
体休めて、また戦ってほしい。
働いてる小夜子さんは格好よくて好きだ。
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