「ここは?」
照が気がつくとそこはなにやら幻想的な空間に立っていた。
煙のようなものが形を成してはまた煙に戻り、また違う形を成す。
「俺は…何でここにいるんだ?」
照がそう呟くと周りの煙が突如動き、瞬く間に公園を作り出すと、照の前を小さな子供が走り抜けていった。
そしてまたすぐに公園は姿を消して、煙のようなものが照のまわりを漂う。
コツコツと足音が聞こえ、照がそちらを向くと先ほどの仮面の男が姿を見せた。
「お前!?」
照の頭に記憶がよみがえる。
「そうだ、俺はテストを受けていた! そしてお前に驚いた俺は保健室に連れていかれ、眠気に襲われた……夢か?」
「ついて来て下さい…」
仮面男は照の質問には答えず、後ろを向き歩き出す。
照は面白くない顔をしながらも後を追って歩き出した。
歩く二人の周りでは目まぐるしく煙が姿を変えては小さな世界を作り出したり、時には人の姿が垣間見えたりと照にとっては驚きの連続であった。
仮面男はそんな照をお構い無しにどんどん先へと進んでいく。
「これが俺の夢なら……起きればいいんだ。」
照はそう自分に言い聞かせ、仮面の男を怪しく思いながらも後を追って歩いていく。
煙がドラゴンの形を成し、照に向かって吼えた。
照は驚いて腰を抜かすもドラゴンはすぐに姿を煙に変えて消える。
慌てて照は立ち上がると平静を装いながら仮面男の元へと走っていく。
「ここはファントムドーム……人の夢を具現化する場所です。」
仮面男がついに口を開いた。
「ファントムドーム?」
「そうです。そしてここがそのファントムドーム唯一の出口となります。」
仮面男が立ち止まるとそこは半透明な壁がそびえて立っていた。
壁の上は確認することが出来ず、左右にも切れ目は見つからない。
そしてその壁に一人が通れるくらいの小さなアーチ上の穴が開いていた。
「ついてきて下さい。」
そう言って仮面男はゲートのような穴の中へと入っていく。
照は少し迷いながらも仮面の男を追って穴の中へと入っていった。
(夢ならば起きればいいんだ……)
一度失われた光が、今まで以上に照にあたる。
まぶしくて閉じた目をゆっくりとあけるとそこには広大な海と青空が出迎え、静かな波音が聞こえてきた。
そして足元は港のような場所で右手には大きな船が停泊していた。
「ここが「Sogno」です。」