その11
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徒然なるままに日々の話や本の話やゲームの話時々駄作
「何はともあれ、ひとまず無事だったことに感謝しようよ」
「そ、そうですね…」
「一歩間違えたら刃がこっちに飛んできてた可能性が高かったけどな」
「終わり良ければすべて良いんだからいちいち突っ込むんじゃありません」
じゃ中央階段行くよ、と連は空のバケツを持ち直して歩き出した。
「中央階段に仕掛けたら、あとはどうするんです?」
皐月が疑問を投げ掛ける。連はちらりと皐月を見やってから答えた。
「10時になったら即校舎を出られるように教室棟に立て籠るつもり。だから“鬼”を近寄らせない方針を取る感じかなー」
そのためにやることがあります、と言って連は立ち止まった。ポケットから細く、透明な糸のようなものを取り出す。
「先輩のポケットは四次元か何かですか…」
「んーん? “比較的威力の弱い爆弾もどき”とこの“爆竹警報”しか入ってないよ」
新しい仕掛け出た、と皐月は目を丸くした。しかもまた変な名前。
「テグスを何本か張って、その先に爆竹を仕掛けて終わり」
簡単な説明に首を傾げる。
「“警報”って何ですか」
「ああ、“鬼”にとっては気付かないと危ないですねって意味で、俺らにとっては“鬼”が近付きました臨戦態勢を、って意味」
「で、爆竹は?」
冬樹が尋ねる。すると連は再びポケットに手を突っ込んだ。
「これだよ。もちろん手製でーす。2人はテグスを張ってよ。俺はそのあとこいつを取り付けるから」
作業は素早く行われた。冬樹と皐月は4、5本のテグスを張り、連はそこに爆竹を取り付ける。
「“鬼”がこれに引っ掛かったら盛大に爆発音がしますよ、っと」
取り付けが完了すると、やっと中央階段に着いた。3人は階段を上がると、皐月が持っていたバケツをひっくり返し、“すってんころり”を流した。一通り仕掛け終わったところで連が「うーん」と唸った。
「この階にいるのは得策じゃないなー」
「階段の構造の問題だな」
「そうなんだよね。両側から上がって来れちゃうし、1階の昇降口まで若干遠い…2階に下りとこうか」
連の言葉に皐月が口を挟む。
「それならいっそ1階に下りた方が早いんじゃないですか?」
「そうなんだけど、問題があってね」
冬樹がその問題点を述べる。
「まず1点目、俺らの逃げ場が限定される。2点目、もし“鬼”が1階にいる状況で俺らが2階に逃げた場合、“鬼”に昇降口を陣取られる可能性がある」
「あ、なるほど」
「じゃあ3階から2階に下りる階段にも“すってんころり”を仕掛けてから下りようか」
3人は階段の上から“すってんころり”を流し、2階に下りた。
これで持っていたバケツは全て空になった。
「さあ2階に行くぞー」
性 別 | 女性 |
誕生日 | 6月4日 |