誓の 肌を伝って蒸散する熱が、佐久の皮膚にチリチリと焼きつく。
実体を持つ体温が、衣服越しに存在している実感。それが女であることで感じる、どうしようもない欲情。
肉を漁るハイエナのように屈み込み、佐久はボタンを歯で挟んだ。煩わしいそれを、まさに獣のように食いちぎる。
力が限界を超えた瞬間、咥えた胸ボタンとその下のいくつかのボタンまでもが張力に負けて飛んだ。
ブラウスの裾がスカートから抜けて、乱れた着衣から覗く身体の陰影が佐久を扇情する。
激しくなる誓の肺呼吸が、目の前の白い胸部を上下させていた。
はだけた襟元から、薄い青のレースをあしらった下着に包まれた胸の合間が露出している。抜けたブラウスの裾からは魚のように滑らかな腹が、そしてずりあがったスカートからは危うい大腿が男を誘惑していた。
なされるがままの肢体が、何故か怒りに似た激情を呼び起こす。
残ったボタンも両手で裂くように、ブラウスを剥いだ。誓は、声を抑えるように唇を噛んだ。
もはやまとわりつくだけのブラウスに包まれたのは、震える括れた腰。胸を支える下着は心もとなくその丸みを包む。
そのさまは凌辱と寸部の違いもなかった。
しかし、誓の上気した頬、トロリとした光が絡む瞳は、捕食を待ちわびるかのように恍惚としている。
幾度も、最深部まで佐久を受け入れたその白い腹を指先でなぞる。くすぐったさに震えるたびに、わずかに浮き上がる腰のアーチ。
誓が膝を立てると、太腿の奥の肌が光に当たる。ガーター・ストッキングのレースに飾られた、内腿が露わになる。
その奥、薄い布の向こうに、誓が身体に宿したドロドロの闇がある。
そこはキツくて熱くヌルついて、眩暈の中へ佐久を引きずりこむのだ。
それを何度も求め、何度も抱いて、まだ足りないのだと悟った。
固唾を飲んだ佐久に、少し身体を起こして誓は微笑みかけた。
その微笑は淫靡で、佐久を捉えて離さない。睫毛の下の瞳の闇が、視線を吸い込む。涙の跡が、その微笑を不思議に彩った。
既に自身の欲情が張り詰めて痛いほどだった。すぐにでも滅茶苦茶に壊したいのを飲み下し、息を吐く。
身体を寄せて抱き起こすと、蛇のような腕が、佐久の首に巻きつく。
押し付けられた唇と、身体に応えるように、佐久は一心に舌を絡ませ、息を啜った。
腰の上に乗る柔らかな体重。誓は牝猫のように身体をすり寄せる。
尻の肉が佐久の膨らみを挟み、下着越しの薄暗いそこが擦れる。身体が波打ち、擦れるたびに吐息が湿っていく。
その刺激が欲情を刺激し腰を震わせ、佐久は思わず短く声を漏らした。
太腿をまさぐりながら、ガーターベルトのストラップを外していく。それからぐいとショーツに手をかけ、邪魔な布を引き剥がした。
「ふ、ぅんっ」
色を帯びた小さな喘ぎ声が漏れた。半脱げのショーツを下ろしきるために、強引に横抱きにする。
咄嗟に脚を閉じようとする誓の太腿の間に、手を差し込んだ。
片手でショーツを下ろし、もう片手、触れるか触れないかで太腿の間をゆっくりとなぞる。
筆を払うようなタッチで優しく、しかし確実に神経の上を往復しながら、徐々に内奥に近づいていく。
「あ、ああ」
ぴくんと震えた足指。片膝に、ショーツが引っかかっている。
誓は佐久の首に縋り付き、刺激のたびに爪を食い込ませる。
その奥に近づくに連れて、湿り気と熱を帯びた空気が触れた。
とうとう、指先が湿った場所にたどり着く。ツルツルした小さな舌に挟まれるような感触が、指先を包んだ。
「ん、あっ」
耳元で、殺した息が漏れる。
第一関節まで肉の間に沈めると、肉壁から出る粘液が絡まった。
意識が遠くなるような、淫らな粘液の匂いが脳髄を直撃する。
「・・・済まん、我慢できない」
耳元で囁く。性急なのはわかっていても、いてもたってもいられない。
ガクガクと腰を震わせる誓を膝立ちにさせ、佐久はハーフパンツを下ろした。
肉がぶるんと弾け出て、もはやその色は黒いほど充血しきっていた。
無理やり誓を抱き寄せると、自身に押し当てるように座らせる。湿った襞に当たっていた先端がやがて、肉の狭間に食い込んだ。
「あ、ダメぇ」
胸板を押し返す誓の抵抗は虚しく、スカートが絡まったままの腰は佐久を飲み込んでいく。
薄めの草叢に覆われた、日に当たらない色の華奢なそこが、赤黒いものを受け入れる。分泌された雫にぬめぬめと光るのは、佐久自身の欲情。
「生はいやぁ・・・」
涙交じりの悲痛な声に、避妊を忘れたことを思い出す。しかし今更抜くこともできず、佐久はぐいっと腰を持ち上げた。
とろとろとキツい肉壁に、すっかり入った瞬間、息が漏れる。
「ん、あ」
わずかに残っていた言葉さえ、誓はすぐに失ってしまう。佐久もまた、既に半分理性が飛んでいた。
中に男を受け入れ、誓は腰を動かし出す。
凹凸のある内壁が佐久を絞り、腰からそのパルスが這い上がってくる。
胸を包んでいた下着をずり上げると、胸が上下動にふるふると揺れた。
濃い血色の蕾は充分に膨らみ、対象的に白い胸の膨らみは合間に濃い影をまとう。
焦らすようにゆっくりと腰を合わせると、目前で細い声が漏れて首筋が仰け反った。
「こ、ども、できちゃう、って・・・ああ」
そう言いながら、すっかり蕩けて尻を押し当てる誓の目尻から、また涙が落ちる。
狂わせた女の身体の最奥まで、一気に届ける。何度も腰をぶつけ、その度に息を吐いた。
気持ちよさと、堪えるもどかしさが相反する。そしてそれは、一度ごとに強まっていく。
抱き合い、求めあいながら、喘いだ。抉るように抜き差しするモノが、湿った音を立てる。
服も半分着たまま、狭いリビングで、二つの身体が絡み合う。
「うっ・・・っく」
声が漏れる。肉体が互いに吸い付き、離れない。交わっている実感が、佐久を責め立てた。
どうして今まで、離れていられたのだろう。
眉根を寄せて、誓が身体を全部を押し当てる。
「・・・ダメだっ」
その身体を、強く抱き寄せた。一瞬息を詰める。
溢れた獣性が、とうとう中で噴出する。
う、ぉ、と声を漏らした。白く濁った欲情が、女の根源を満たしていく。
ピンと痙攣していた誓の脚が、同時にがくりと脱力する。
何もかもが水に溶け、霧散していく。長い息を吐き、佐久は全てを出し切った。