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繋ぐ手が彼の存在を確かにする

深入りはしないと決めた最初の夜

私は溺れてしまったのかな

あまりにも息のしやすいココじゃ溺れたのも気づかない



「12時ピッタリにちゅうしよ」

彼の乙女な提案に頷いて
顔を近づけてスタンバる

「…恥ずかしいんだけど」

「これくらい慣れてよー」

目の前でへらりと笑う

「あ、12時」

「あじゃねぇよ!過ぎちゃうじゃん!」


腕を体に回して触れるだけのキス

「おめでとう」

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大きな船が闇に身を潜めているのがここからだとハッキリ見える

何でもない平日の夜に特別な気持ちの2人は
いつもより甘くて酸っぱい

2人だけが分かればいい

あの大きな船もこの気持ちも




「それでさ、漁師のオッサンが」


仕事であったこと
仕事仲間とお昼に食べたラーメンが
すごく美味しくなかったこと

色気もくそもない

「結局そんなに食べれなくてさー」


毎食、定食2人前くらい食べるのが普通の彼にとって
お昼が食べれないなんて死活問題な訳で

「まぁそのあと我慢出来なくて弁当食ったけど」

至って中肉中背の彼のどこにその大量の食料が消えていくかは分からない


「ちょっとー聞いてる?」

「聞いてるよ。よく食べるなーと思っただけ」

「そんなの今更じゃん」


シッシッシ

変な笑い声が車内に響く


「あ、後5分」


日付が変わる5分前

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日付が変わるまであと数時間
「お疲れ様ー」

一言呟き車内に乗り込む

「お疲れ様ーどうしよっか?夜も遅い飯って感じでもないでしょ?」

22時を回ったデジタル時計

「そうだね。12時までゆっくりする?」


早く会えば雑貨屋さん巡り
遅く会えば海へ

それが私達の定番

だけど毎回新鮮な空気を運んでくれる彼。


「んじゃ海行くか!ちょっと遠い方のとこまでドライブ♪」

大きくハンドルをきって国道を走り出す

特別なことはしないけれど
あと少しでで彼の大切な日


頭の中はリクエストされたプレゼントと
短い手紙が入った袋をいつ渡そうか
そのことだけ

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「大切な日は大切な人と迎えたい」

そう言った彼。
多忙なくせに夜迎えに行くからだって

だから今日だけは12時過ぎまで一緒にいたいだって

普段そんなこと言わないくせに


「いいよ。居てあげる」

どこまでも可愛くない私はどこまでも貴方に夢中で

見透かされるように優しくキスをされる

「ありがとう」




その台詞はプレゼントあげてからにしてよね

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「ところで誕生日なに欲しい?」

「お!覚えてた?俺の誕生日」


…まあ彼氏の誕生日すら運悪かった忘れる私だから
その答えは正しいけど。


「覚えてるよ。で何が欲しい?」


車の天井を見て唸る彼
お金はあるし買いたいものは自分で買えてしまうから悩むだろうな

何でもいいとか言われたらちょっと困る


「あ、〇〇ってブランドのアクセサリーがいい!」


それは私がよく行くショッピングモールに
入ってるメンズの服屋さん


「あそこ好きだったんだ?」

「うん!忙しくて行けてないけどね」



へえなんか意外。
シンプルなものが好きな彼だけど
そのお店は少しロックで
ゴテゴテした服も置いてある

きっと不思議そうな顔で
彼を見つめてたんだろう
「その中でもシンプルなやつとかが好きなの!」
って言われてしまった


「私何も言ってないよ」

既に座り直した座席のドリンクホルダーの
アイスコーヒーに手を伸ばしてしらをきる


「言わなくても俺には分かるの。お前が何を思ったか」


そう言ってくれた彼だけど、その言葉が私にとって彼が思う以上に大切なことをきっと知らない。

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