「薄くなっていく。大丈夫。」
左腕を見た彼は優しい顔のまま呟いた。
「うん。別に大丈夫だよ。」
左腕を捕まれて元の体勢に戻れない。
「今はしてない?」
何が?なんて聞かなくても質問の主語は嫌でも分かる。
リスカ
「してないよ。最近は。」
「そっか。無理しなくていい。しない今を続けることから始めよう。」
彼はそう言って
傷の上からキスをした。
数日後、またいつものように
彼と会って海の近くへ。
「腕見せてよ。傷ある方。」
え、何でそんなこと言うの。
アナタも私を馬鹿にしたいの?
頭の中にあいつの言葉が蘇る。
《リスカするなら死ねよ》
ああもう。
「…何で?」
街頭を睨みながら彼に背を向け答える。
「あ、嫌だった?別に何かしようとかじゃなくてただ見たかっただけだよ。」
優しく微笑む彼に嫌悪感など一切なくて
袖をたくしあげた。