私はNセメント会社の、セメント袋を縫う女工です。私の恋人は破砕器

(クラッシャー)へ石を入れることを仕事にしていました。そして十月

の七日の朝、大きな石を入れる時に、その石と一緒に、クラッシャーの

中へ嵌(はま)りました。仲間の人たちは、助け出そうとしましたけれ

ど、水の中へ溺(おぼ)れるように、石の下へ私の恋人は沈んで行きま

した。そして、石と恋人の体とは砕け合って、赤い細い石になって、ベ

ルトの上へ落ちました。ベルトは粉砕筒(ふんさいとう)へ入って行き

ました。そこで鋼鉄の弾丸と一緒になって、細(こまか)く細く、はげ

しい音に呪(のろい)の声を叫びながら、砕かれました。そうして焼か

れて、立派にセメントとなりました。骨も、肉も、魂も、粉々になりま

した。私の恋人の一切はセメントになってしまいました。残ったものは

この仕事着のボロ許(ばか)りです。私は恋人を入れる袋を縫っています。