なぜかこれ書くだけなのに2時間・・・。
日本語タイトルなのもですが、いつもと系統変えた感じです。


「飯盒の中の戦争」

 私には、身体の弱い娘がいた。家を空けてばかりの私は、娘にとって父親とは言えなかっただろう。一番辛いときに、電話に出ることさえ出来なかったのだから。
 ようやく帰った時には、いつも娘は病院のベッドの上にいた。青白い顔で、文句のひとつも言わずに。いつしか妻は怒ることさえやめ、私は家族の形を失った。その妻と娘を置き去りにして、私は異国の空を飛んでいる。
 …私は、何を守るべきだったのだろう。もうずっと、その疑問は私の脳裏から消えなかった。
 だから、その二十歳そこそこの兵士の姿を見た瞬間、無関心ではいられなかった。まだ大人になりきらない顔立ちの、兵士の少女。白いベッドの上で、病室のにおいに包まれた、その姿。そして彼女は、青白い顔で私に微笑み、囁いた。

「救ってくれて、ありがとう」と。

 私はきっと、少女の中に娘を見ていた。その笑顔に、自分がずっと求めていたものを見出した。この子を護ることができて本当に良かったと、痛切に思った。家族を守れなくても、それでも私は父親という生き物だった。

 だから、私はきっと盾であろうと誓った。