かなさま、どうぞ罰ゲームお持ち帰り下さい。
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寝ぐるしい夜だった。
気圧が高く湿気の少ない快適な気候にあるバチカルの屋敷では考えられないくらいに暑い。こんな経験はなかった。
ルークはあまりの暑さに目が覚め、汗ばむ体をどうにかしようと、ベランダに出ようと起き上がった。
…が。
「あれ?…ガイ?」
隣のベッドで寝ている筈のガイの姿がない。
きょろきょろとあたりを見渡してみると、視界を窓のカーテンがふわっと揺らめき、同時に風が入ってくるのを感じた。
(窓開いてる…?)
ルークはベッドから起き上がり、涼しい空気を運んでくるベランダへと近づいて行った。
そうして案の定、そこに居たのは。
「…ガイ。おい、ガイ!こんなところで寝てたら風邪ひくぜ?」
ベランダに用意された椅子に腰かけたままうたたねしていたガイの肩を揺さぶると、ん、と唸りながら目を覚ました。
「あれ…俺、寝ちゃってたのか?」
自分を起こしてくれたルークの方に目を向けると、少し呆れ顔で見下ろしている。
いつも反対の立場である故に、慣れない光景だった。
「ったく。お前も暑くて眠れずに来たんだろ?」
「ああ…まあな。外の風は結構涼しいぜ。しばらくここに居れば体も冷めるだろ。」
「ああ〜もう、ほんとあっちー。蒸し暑いってこう言うことだったんだな。体中汗ばんできやがるし。」
「ん?どれ?」
そう言うとガイはおもむろにルークの腕を掴み、もう片方の手で上下に撫でた。
「うっ…おい!!あちーっつってんだろ〜!」
「はは。俺の手とどっちが熱いか比べようと思って。」
「そんなん比べなくていいっつーの!!」
「まあまあ。そんなに怒ってると余計に暑くなるぜ?」
「だれのせーだ誰の!」
この時ばかりは不快な長髪を手で束ねながらくすくすと笑うガイの横にどかっと座ると、少しむくれた顔でそっぽを向いた。
「そっか、そんなに暑いなら俺は戻るとするか。近くに人がいちゃ余計暑いだろ?」
「え?」
予想外のガイの言葉に、ルークは思わず素っ頓狂な声を出した。
確かに人が隣にいるといないとでは体感温度は違う。
だが、ガイが隣にいる事について自分はなんの抵抗も感じていなかったし、暑くても隣にいるのが当たり前だと思っていた。
このガイの言動に、何故か動揺している自分がいる。
「あ…あのさ」
「ん?」
立ち去ろうとしたガイはご主人さまに呼ばれて足を止め、振り返った。
「べ、別にお前は行かなくていいから!」
「?ルーク…?」
暑い触るなと言っていたわりに手を伸ばし、自分の腕を掴むルーク。
(ったく、素直じゃないな…)
そんなところも可愛いと思ってしまうのは親バカだろうかと、ガイはふう、と軽く息を突くと、腰かけていた椅子に座りなおした。
「…暑いんじゃないのか?」
「い、いいんだよ!別に!ここに居ろ!命令だ!」
暑いだけにしては紅潮しすぎともいえるその頬が何を物語っているか、この時のルークにはまだ分からなかった。
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こういうくっつく前みたいなノリが大好きです。趣味丸出しですみません〜。