少し前から視力の低下を感じていた。

今日はボーナスが出たこともあって、思いきってコンタクトを作りに来ている。
目のカーブやらなんやらを計るために眼科で検査しなきゃならないんだってさ。
飛び込みで行ったから、40分待ちらしい。


看護師に渡された問診表に簡単に記入を済ませて、適当に雑誌を取って暇つぶしに読んでいると、俺の番が回ってきたようで、名前を呼ばれた。


「ルークさん。検査室へどうぞ」

「は、はい!」

予想外に、俺を呼んだ声は男だった。

こんな検査なんて初めててで、ちょっと緊張する。


検査室に入ると、さっきの声の主だと思われる男が立っていた。

白衣に包まれた金髪の美形だった。

(うわ…!なんだこの人…!)

自分よりも随分と背が高く、余裕で見おろされている。

彼の誘導に従って、色々と検査を始めた。

俺は妙な緊張のあまりガチガチになって、終始ぎこちない動きだった。
そしていよいよ、コンタクトを着けてもらうことになった。

前も下も鏡だらけの机。
この金髪の看護師の顔がいろんな角度から映って、まるでこの人に囲まれてるような錯覚に陥る。

「じゃあ装着するので、まっすぐ前見ててくださいね。」「は、はい!」

初めての装着と、俺の顔に触れる彼の手に緊張しまくり、情けないことに少し震えてきた。
一面の鏡の中の彼が、俺を舐めるように見ている気さえする。


まだかまだかと待ち構えていると、肩にポン、と手を置かれた。


「…ルークさん。初めてで緊張するのは分かりますけど、もうちょっと力抜いてください。」

彼はくすくすと優しく微笑みながら、そのまま肩に置いた手で俺の肩をマッサージし始めた。


「は、はい…すみません」

恥ずかしくて赤面して俯いたら、下にある鏡に俺の顔がもろ映りだった。
焦って照れて、ひどい顔をしてる。
もちろん、鏡越しに俺の顔は彼にもモロ見えだろう。

「いいんですよ。みんな初めは怖いですから。…あなたはちょっと特別みたいですね。」


超イケメンフェイスでそう言われ、ますます照れたけど嫌な気はしなかった。

…ていうか、俺がこんなにも緊張するのはあんたのせいなんだけどな…。


やっとの思いではめ終った。
少し様子を見て、違和感があるようなら来てくれとの事だった。


俺は確実に違和感を訴えに行くと思う。


心に残ったこの感情を訴えに。