夜の街は世界を変えるとよく耳にするが、私もそう考える一人なのだと思う。太陽がサンサンと輝いている午前中の暖かさは私にとって苦手以外の何者でもなく、又自己の矮小さが曝け出されているような嫌な感覚に陥るが夜はそんな私をひたむき隠し続けてくれている、そんな気がする。

シン、と静まり返った閑静な住宅街の静寂を切り裂くようにけたたましく救急のサイレンが鳴り響き、それは死神のやうに人々の命を奪おうと迎えにゆくのだ。救いにゆくのではない、殺めようとするのだ。

「キミ、毎日そんなコト考えているの?」

そうして私の意識は彼の言葉によって現実にログインされた。窓の縁に身体を投げ出し、イヤフォンからは心地よい好きな楽曲が流れていてそれなりに非現実的なことを空想し浸っていた私を彼は強制的に現実世界へと引き入れたのだ、全く空気の読めないヤツは嫌いである。

「そんなことって…アルゴモアだって世界が破滅するかもしれない、っていう予言だって現に残していたんだし、救急車だってほんとうは霊柩車かもしれない。姿形が変わっているだけで本質は一緒だと思っても不思議じゃないでしょ、太陽と月みたいなもんじゃん。」

「アルゴモアの世界破滅がどうして救急車が霊柩車の本質へと変わるのか僕にはワケがわからないんだけど…、なんの証明にもなってないよ。」