「夜汽車」という言葉が過去のものになろうとしている。

今話題のLCCで東京へ行った帰りには、「まだそんなものがあるの?」とびっくりされるくらいの時代遅れな「夜汽車」で帰った。
東京駅のホームにはカメラを持った老若男女が「夜汽車」の到着を待っており、あまりの数の多さに先日廃止になった「あけぼの」に続いてこの列車も廃止になるのでは?と疑うくらいだ。
どうやら、ただ春休みだから撮影する人が多いだけで、この日も満席御礼のこの「夜汽車」は当分廃止にはならないようだ。

この完全に時代遅れの「夜汽車」は、そうは言いながらも、今でも沿線でのカメラの多さや満員御礼人気ぶりから察するに十分人々の旅情をそそる乗り物のようだ。
しかし、時代の流れはこの「夜汽車」の存在を許さないようで、高速道路の整備による夜行高速バスの発達と、新幹線の延伸と高速化、それに飛行機の低価格化などの環境は「夜汽車」をこの世から抹殺しようとしている。

このように「風前の灯火」となっている「夜汽車」も、かつては全国津々浦々走っており、その独特な旅情を醸し出す事から歌などにも歌われてきた。

ところで旅客船は歌に歌われた事があるのだろうか?
旅客船はもっと大きい括りで「何かを運んで商いをする船」の仲間で「商船」と呼ばれるがその「商船」の歌を聞いたことがない。
歌謡曲で多いのは「漁船」の歌で演歌だとほとんど漁船の歌になる。
他には時代の流行で「戦艦」の歌がやたら歌われる事もある。(笑)
それに比べて、商船や作業船は地味である。
隻数は戦艦より多いはずだがこれだけ世間の関心が少ない事の証明だ。

因みに、「商船」を歌った歌謡曲は武田鉄矢の「倭人傳」しか私は知らない。
この武田鉄矢は奇しくも「夜汽車」の歌も沢山歌っている。

鉄道会社はこの20年間、旅情を醸し出す乗り物を淘汰してきた。
そして「移動手段」と「鉄道を楽しむ」車両を明確に分けつつあり、この2つの混沌とした中で生まれてきた「旅情」は今後急速に鉄道からは衰えてゆき、歌に歌われることもなくなるだろう。
一方で「移動手段」に特化してしまった鉄道会社の行く末も密かに心配だ。

しかし、歌にも歌われない「商船」は論外だ!(笑)
商船の歌があれば誰か教えてください。