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幻の島

潮干狩りのシーズンがやってきた。
春先の大潮の日は夕方によく潮が下がる。
その自然現象を利用して沢山の人が干潟へと向かう。
大概の人は陸地から広がる干潟へ行くが、本当によく干上がる年のうちの何日かの大潮には、海の真ん中に突如として島が現れる事があり、そんな島へ船を使って潮干狩りに行く人もいる。

瀬戸内海広しと言えども、「幻の島」が現れる地域は2地域しかなく、瀬戸大橋周辺と広島県の尾道・三原・因島周辺に限られる。
島はそれぞれ高さが違うので、現れる頻度は島によって皆違うが、大潮だからと言っていつも現れるとは限らない。
年に一回しか現れない島もあるくらいだ。

「幻の島」も島によっては日にちと時間を指定して渡船が運航される島があり、沢山の人が訪れる。
岡山県倉敷市の「高洲」が渡船で渡れる島としては有名である。

この「幻の島」の出現のメカニズムこそが瀬戸内海の航海の難しさの証であり、水軍が世に必要とされ、かつて勢力を誇った 理由である。
「幻の島」の存在は「海は真ん中が深いとは限らない」証拠なのだ。
島が現れている時は避けて通ればよいが、現れていない時は存在を知らなければ避けようがない。
かといって、浅瀬であることは間違いないので見えないからといって浅瀬の上を通ると船は座礁してしまう。
どこに浅瀬があるのか旅の人にはわからないので、土地の漁師に水先案内人を頼む。
当然頼むとお礼をするので、瀬戸内海に船の往来が盛んになるほど土地の漁師は資金を蓄え、勢力を作ってゆく。
GPSも海図も無かった頃の話である。

ちなみに、潮汐のメカニズムについて誤解している人が多い。
月と太陽の引力によっておこる潮汐は、毎日ほぼ2回づつ潮位のピークを迎える「満潮」と潮位が最低になる「干潮」があり、この前後に潮は全く動かなくなる。
この潮の止まる現象は毎日あり、大潮であってもこの時には潮が止まる。
大潮だからと言って潮がいつも流れているのではなく、また小潮でも時間によっては十分潮が流れている。
「大潮」「小潮」などの呼び分けはその日の干満の高さの差を表しているのであって、潮が動くのかどうかを表しているのではない。

説明が難しく理解されにくい潮汐のメカニズムだが、この自然現象が瀬戸内海の歴史を作り価値を生み出してきた。
瀬戸内海の歴史を語る上で、「潮汐」は避けて通れない。
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