何故、空はまるで演出の様に雨を降らすのだろう。
人の悲しみに共感した雨の涙とでも言うのだろうか、薄暗い空は人の気持ちを更に増殖させその世界を悲しみに染める。
毎年10月10日にある慰霊祭の式典、その日は里が負の感情に染まる日。
「嫌な雨だな」
「シカマル‥」
「風邪引くぞ」
「いいってば、シカマルが濡れるってばよ」
差し出された傘を押し返せば、それならと傘を持ったまま自分の隣に立つシカマルに苦笑が漏れる。そんなに大きくない傘は二人で入れば肩に雨があたる、だのに自分の肩に雨があたらないのはシカマルの優しさ。ちらりと反対側を見れば肩と言うより半身が雨に濡れて服が重い色に変わっていた。
何も言わずにこうやって優しくされてどうして好きにならずに居られようか。
「ホントまいるってば‥」
「あ?」
「何でもないってばよ!それにしても今日のシカマル格好良いってばね!!」
「はぁ?」
式典に出た時の服装のままなのだろう、全体的に黒い格好は少し大人びて見える。私服や任務服とも違う格好につい見惚れてしまう。
「なに言ってんだ。俺はいけてねぇ派だっつーの」
「ホントの事を言っただけだってばよ?」
「っ、お前もう喋るな‥」
照れる様にそっぽを向くシカマルがおかしくてニシシッと笑えば、笑うなと額を小突かれる。こんなやり取りが大好きで暖かい気持ちになる、シカマルも同じ気持ちでいてくれるのか、ふとした時に見せてくれる優しい笑顔。その笑顔を見るとドキドキと煩く鳴る心音が心地好かった。
「式典終ったんだってば?」
「おう、暇すぎて寝ちまいそうだったけどな」
「ははっ、シカマルらしいってば」
自分は出れないから離れた火影岩の上から里を一望し祈りを捧げる。里を、皆を恨んだ気持ちも確かにあるけれど、それでも散っていった人達には罪はない。
だからせめてこうやって隠れる様に祈ろう。
「それにしても‥なんでシカマルは俺のいる場所が分かったんだってば?」
「‥‥‥勘」
短く告げられた言葉に思わず吹き出す。きっと探してくれたんだろう、あちこち歩き回ったのを示す様にズボンの裾が泥水等を含んで汚れている。式典から真っ直ぐにこちらに来ればそんなに汚れる筈もないから。
自分がこの日は独りでいる事を知っているシカマルは、めんどくせぇから式典には出ないって言って側にいてくれようとしてたけど、奈良家の嫡子が出ない訳にはいかなく渋々出席した事を知っている。
知られていないと思っているのだろう、偶々だと言い訳するシカマルがおかしくて自然に浮かぶ笑顔。
「‥なに笑ってやがる」
「べっつにー」
「そーかよ」
いつの間にか雨は止んでいて、雨雲も少しずつ消えて光が里を照らす。
この風景もシカマルを見るのも今日で最後なんだと思うと目頭が熱くなった。
でもシカマルの前で泣く訳にはいかない、もう時間がないのだから早くシカマルと離れなければいけない。
見られる訳にはいかないんだ‥
「あーあ。タイミング悪ぃ」
「お、まえ‥」
なのに神様はどうしてこんなに意地悪なのだろうか‥
音もなく降り立った暗部にシカマルが目を見開く。気まずそうにこちらを見るシカマルに苦笑して一歩前に出る。
「なかなか賢いな、うずまきナルト」
「‥‥勘だってばよ」
「そうか‥ならば抵抗はするな。抵抗しなければ痛みはない」
優しさなのか面倒からなのか分からない物言いに笑いそうになった。
困惑するシカマルに視線をやり、声に出さずに謝る。本当はシカマルの知らない所で逝きたかった。でも大好きな人に見送られて逝ける喜びがある。
これから先、悲しい思いをするだろうけど笑ってて欲しい。
そして自分勝手だけれどたまには思い出して。
そうすれば俺はその中で生きていけるから‥
「待てよ!何をする気だ!?」
「黙れ」
「テメェ!ナルトをどうする気だ!!」
「任務だ。お前に口出しする権利はねぇ」
二人のやり取りを聞きながら静かに目を閉じる。
大好きな人の声と少しは好きになった人の声を最後まで聞けて幸せかもしれない。
「うずまきナルトはもう覚悟している。他人が口出しするんじゃねぇ」
「なんで‥なんで抵抗しねぇーんだよナルト!!」
それは抵抗しても無駄だと分かっているから。
もし下手に抵抗して九尾が暴れたりするのが嫌だから。
「ゴメンなシカマル‥」
きっと下らない理由だ、馬鹿だと思われるかもしれないけれど、一度請け負った任務を放棄しないのがこの人。
逃げ切れないんだ‥
この人が任務を受けた時点で俺の人生は決まった。
弱虫だと罵られるかもしれないけど、今まで恐れていた九尾の暴走を止める事が出来る人になら殺されても良いって思ってしまったんだ。
「止めろ!止めてくれ!!」
あぁ。やっぱりシカマルは泣いてくれるんだ‥
もうそれで十分だ‥
「ナルトぉぉ!!」
赤い鮮血が舞い、悲痛な叫びが谺する
「任務完了」
抑揚のない声に比例して叫ぶ声はまた雨雲を呼び雨を降らす。
「くだらねぇ‥」
安い演出の様に悲しみに泣く男の涙の様に降る雨に流れて赤い道が出来るのを見て静かに呟くと一瞬で姿を消した‥
続く
だっはー(汗)
続く?続くのか自分!!
だって最後を纏められない←
さくっと任務を実行しましたけど、後戻りは出来るぞ自分(笑)
このままか逆転か‥
さーてどうしましょう(未だに迷ってるw)