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『学パロ文化祭ネタ会話劇』

■書きたいものを勢いで書いた短文です。夢要素は薄め。主人公の女の子視点ですが、女の子はひっっと言も喋らず、心の声でひたすら分析&ツッコミを入れております。おまけに竜崎さんとの絡みもなしの完全コメディ(竜崎殺しともいう)です。登場人物は月、ミサ、高田、松田、竜崎、ヒロインとモブのクラスメイトが冒頭部分にちょこっと。何でも良ければ御覧ください。一ミリでもあなたを楽しませることができますように。

*****

文化祭を一ヶ月後に控えた教室は実に賑やかだった。

「ジュリエット役はやっぱ弥さんでしょ」
「それいい。ジュリエットの衣装着てる弥さん見たい」
「えーアタシ? ま、できないこともないけどぉ」
「まじ? 弥さんがやるなら俺ロミオ役立候補しちゃおうかなー」
「バカ男子、ロミオ役は台詞の量も多いし頭のいい人じゃなきゃ無理だって」

クラス全員で参加でき、尚且つ達成感も味わえるという意見から演劇をやることになった私たちのクラスは今、劇の配役について話し合いを進めている最中だ。進行はクラス委員の夜神くんと高田さん。自主性を育てるため担任の先生は席を外している。
「はいはーい!」
「弥さん、どうぞ」
ピンと手を挙げる弥さんを、夜神くんが若干迷惑そうな表情で指名した。
「ロミオ役はライトがいいと思いまーす」
予感が的中したのか夜神くんは目元を押さえながら悩ましげな息を吐く。
「えっと、弥サン……知ってると思うけど僕は去年も演劇でキャストとして出てたし、今年は裏方の照明の担当を希望してるんだけど」
「えーライトが照明? それってワケわかんないよ」
「あはは、確かに」
「マッツー煩い」
「え、ひどい」
弥さんの松田くんに対する風当たりは厳しい。しょげかえる松田くんを隣の席の相沢くんが宥めている頃、もう一人の進行役、高田さんが夜神くんの援護射撃を開始する。
「弥さん。夜神くんと恋仲になりたいからって、私情は挟まないでください。夜神くん。丁度良かった私も照明をしたいなと思っていたの。定員は2名だから決まりね」
私情は挟まないんじゃなかったのか。 高田さんは勝手に纏めると、夜神くんの返事も待たずに黒板に書かれた配役表の、照明(2)の横に自分と夜神くんの名前を追加した。これに反応したのはやはり弥さんだ。
「異議あり!」
「ここはいつから裁判所になった」
夜神くんがツッコんだ。
「そーいう清美だって私情挟んでるじゃない」
弥さんはときどき凄く真っ当なことをいう。
「私はクラス委員として公平に話を纏めただけです」
「あー。もしかしてアタシがジュリエット役に撰ばれて自分が撰ばれなかったことが悔しいんだ。そうでしょ? 」
そして、口が達者だ。流石芸能事務所に所属しているだけある。
「……なんて不愉快な人なのかしら」
「図星だった? ごめーん」
バチバチと火花を散らす二人。あれだけ賑やかだったクラスが気づけば私語一つなく、シンと静まり返っていた。先生を呼びに行った方がいいだろうかと悩んでいると、今最も発言力のある夜神くんが「そうだ」と呟いた。
「ロミオやってくれるの?」
弥さんはどこまでもプラス思考だ。高田さんはさっと夜神くんの側にあった黒板消しを掴むと、先程書いた名前が消されやしないかと不安そうな顔でそれを握りしめた。守るべきところはそこなのだろうか。
夜神くんは組んでいた腕組みを解くとスッと人指し指を一点に向けた。
「ロミオ役は竜崎にやってもらうというのはどうだろう」
「はい?」
その瞬間、一瞬にしてクラスの空気が変わった。
「こういう王道の作品にはちょっと変わったキャスティングがウケるんだよ」
「正気ですか?」
夜神くんの解説に皆が、成る程……確かに……と共感する。
竜崎くんだけが置いてきぼりを食らっている様子が、隣の席の私にはよく分かった。
「竜崎なら台詞だって余裕だろうし、普段の奇行を除けばルックスも悪くはないしね」
夜神くんはナチュラルに悪口を言った。
「流石夜神くん。ナイスアイデアよ」
高田さんは自分にとっていい風が吹いてきたことで元気になった。
「ち、ちょっと待ってライト、私は反対だよ! ロミオ役はライトじゃなきゃ……」
「ミサ。僕はキャストにはならないけど、竜崎がロミオをやるっていうなら監督としてメガホンをとりたい。演技指導もみっちりやるつもりだ」
「ライトが監督……演技……指導……、ミサやる」
「いい子だ」
夜神くんは弥さんを洗脳でもしてるのだろうか。
「待って夜神くん、照明は? 面白いキャスティングっていうなら夜神くんがやらなくて誰がやるの」
「僕は面白いキャスティングなんて一言もいってない」
高田さんは必死になるあまり、夜神くんをディスっていることに気づいていなかった。
高田さんの手から転がり落ちた黒板消しを拾った夜神くんは、自分の名前があった場所に下僕の名……じゃなかった、新しい名前を書いた。
「松田さん。僕の代わりに照明を担当してくれないかな?」
「え、別にいいけどどうして?」
「将来の夢は警察官っていってたから、今からスポットライトを当てることに慣れておいた方がいいと思って」
夜神くんは真っ当なことを言っているようで、実は適当だった。
「ライトくん覚えててくれたんだ僕の夢。だったら任せてよ」
そして松田くんは少しずれていた。
「みんな(揃いも揃って馬鹿ばかりで)助かるよ」
煽り文句をつけるとしたら“☆ 教祖・夜神月の爆誕──!?” だろうか。
「あの、ちょっといいですか?」
「何だ竜崎」
のらりくらりと竜崎くんが立ち上がったことで、クラスの注目が再び竜崎くんに集まった。
「ロミオとジュリエットという演目は決定なのですか?」
「ああ、先週決まって、もう各学年の担任教師にも報告がいってる筈だけど」
「成る程、今変更案を考えても他のクラスないし学年に迷惑をかけかねないということですか」
含みのある言い方に夜神くんが若干イライラと訊ねた。
「何か問題があるなら言ってくれ」
「いえ学校行事に遅れが出ることは好ましくありませんし問題というほど大きなものではないのですがただ一つ言わせてもらえば弥さんとのキスシーンが死んでも嫌だと思っただけです」
死んでも嫌ならそれは大きな問題ではないのか。潔癖症の竜崎くんらしい物言いにクラスがどっと沸いた。弥さんだけは怒っていたけど。
命よりも学校行事に遅れが出ることに重きを置く竜崎くんに、もっと我が儘になってもバチは当たらないよと教えてあげたい。
「安心しろ竜崎。キスシーンはフリでいいんだ。というかクラス劇でそこまでさせられないよ」
「それを聞いて安心しました。弥さんはバイ菌が多そうなので」
竜崎くんは余計な一言で弥さんの怒りを買った。


おわり……?
■追記であとがき
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