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小咄

その1


田圃の畦道を、友人と歩く。

その友人とは幼い頃、それこそ物心つく前からの中でいつから一緒にいたんだか正直覚えていない。
ただ、毎日顔をあわせて、共に遊んでいたのでそれが当たり前になっていた。

西の山に日が隠れ、もうすぐ辺りは暗闇に包まれる。

急いで家路につく途中。
ふと、彼が立ち止まった。

後ろをついて歩いていた自分は、彼と共に立ち止まる。

彼は薄い朱を抱えた山際を眺めながらぽつりと。

「今度あっちゃんに会えるのはいつだろうね」

自分は村を出て久しく、彼は婿に入って少し経つ。

今回会えたのは偶然にも仲の良い友人連中が声を掛けてくれたからだった。

自分達はこの村に戻る予定は互いにないのだ。

彼がそんな風に溢すのは、何の気なしだったのかもしれない。
けれどもその事実に、正直愕然としたのだった。

そう、ここにいる二人が次に会える保証などどこにもない。
もしかすれば、この先会うこともなく一生を終える可能性の方が高い訳なのだ。

彼の一言に答えることが出来なかった。
いや、彼も答えを求めていなかったのかもしれない。
ただ、自分達の際に横たわる現実を述べただけだったのだろう。

暫くして彼は歩き出し、自分もそれに続く。

無言のまま互いの家への分かれ道で、彼と別れた。

「かんちゃん、またね」

子供の時分には何とも感じなかったその一言が言えなかった。

帰省がおわり

新幹線で帰途につく。

例年のGWよりもかなり短い期間の里帰り。
そのせいかいつもより身の濃い日々が過ごせたかと。

その中で尻の青い頃からの友人に最終日を共に過ごしたのですが、最後の見送りの際家族よりも別れを惜しんでくれて、かなり嬉しかった。

高等学校を卒業後親元を離れたので、故郷を離れて十年以上。
ときときに帰省してはいたのですが、段々と自分も家族も私が家にいないという環境に慣れてそれぞれの拠点に戻る。
それが当たり前になっていたので特に何とも感じなくなっていたので、友人が、自分と別れがたくしてくれてドキ。

「あぁ、そっか、今度いつ会えるのか分からないんだものなぁ」

と、改めて気がついて、その子の純粋さに感動。
自分のある種の枯れてしまった部分を発見して、友人の幼い頃とかわらない優しさが本当に嬉しかった。
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