カナリヤは歌う

「大丈夫」そううそぶく癖に、

手は君を掴んで離さない。

寝る直前まで考えてたこととか見たことって、
その日の夢に出やすいのに、

何で、出てきてくれないのよ、ばか。

でもそこにも君はいない

って謝ってばかりの私に、

君は笑って言ったんだ。

「こういう時は“ありがとう”って言うんだよ」

小さな声で伝えた“ありがとう”に、
君は嬉しそうに、

「どう致しまして」



君の笑顔が好きな私は、
それから“ありがとう”って、少しずつ伝えるようになった。

周りにも言ってみたら、
君と同じで嬉しそうに笑ってくれた。

「どう致しまして」

君と同じ言葉。



そのことを君に伝えると、
得意気に胸を張っていたよね。

でもね、少し照れていたのにも気付いていたよ。

……内緒だけどね。

って君が言うから、

「大丈夫そうに見える？」

って返したら、

君はいつも困った顔で笑うんだ。


…困るくらいなら聞かなければいいのに。

それでも聞くんだ。