「美味しかったかい、僕の左目は」
少しの皮肉をこめて、後ろでたたずむ人食い少女に尋ねる。
ねぇ、美味しかったかい。
僕の半分の視界は、世界は君が思うほど美しくはないんだ。
年月を重ねた僕の、僕の世界はただ色褪せていくだけなんだから。
君は知らないんだろうね。不死の僕らは、見かけは何も変化しないが、中身は音もなくただただゆっくりとこの世界に飽きていくんだ。
「とても美しかったわ」
君は今笑ってるの?
「それは、良かった」
僕の左目。君は何を感じ取り何を見たのか。そんなの分からないけど、君が美しいと感じてくれたならそれでいいのかもしれない。
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君は美しき瞳
吸血鬼の瞳は、この上ないスパイス。あなたの世界を私も感じ取りたかったの。
目を開けたら、視界がいつもとおかしかった。何がおかしいのかもわからない。ただ、何かがいつもと違うんだ。
ふと目をこすろうとして、気づいた。
左目がなくなっている。
全身が固まった。左のまぶたを触ってみてもただの皮しかなく、指先をそこにあるはずの眼球に触れてみたが何もなくただの空洞だった。
あぁ、本当に目がなくなってしまったのかもしれない。僕はいたって冷静にこんなことを思った。だって、どこかでこれを予期していたんだ。
どこからともなく、くすくすと笑い声が聞こえてくる。僕の左目を食べたであろう人食い少女の笑い声が。
「なぜ人は人を好きになるのか」
とある日、そう問われまして
思わず考えこんだ
個人が自我をもつから?
とか答えたけど自分の答えに納得がいかず、いろんな人に聞いてみてもぴんとこなくて
でも昨日
「好きになったらしょうがないんだよ」
って言われて妙に納得してしまった