俺の相棒は、最強のピカチュウになりたい、らしい。
いや、俺、ジムめぐりとかする気ないんだけど。
ちょ、おま、ピカチュウのくせに人を引っ張るなよー!!
…そんな気まぐれピカチュウ版プレイ記です。
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じゃっく(由来:ステレオジャック)と名付けた俺のピカチュウは、モンスターボールが嫌いだ。
自分が入るどころか、俺がポケモンをつかまえようとするのさえ嫌う。
おかげでいまだに手持ちはこいつ一匹。
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「いい加減、機嫌直せって」
俺の言葉にじゃっくは背を向けたままちぃ、と低く鳴いた。
理由はわかってる。
覗きに行ったニビジム、その出入り口付近に居た変なオヤジに「君のピカチュウじゃ難しい」って言われたことに腹を立てているのだ。
…正直、ジムの傾向が分かって有難かったんだけどな。
「…しょうがないだろ、電気の技が地面に通用しないのは事実なんだから」
だからそろそろ他のポケモンを、と言うが早いか電撃が近くまで飛んできた。
ばちっ!!
火花が飛ぶ。
「あっぶね」
怒鳴ろうとじゃっくの方に向き直ると、振り返ったじゃっくはぽろぽろと両目から丸い雫をこぼしていた。
言葉が出てこなくなる。
ちぃちぃ、と鳴いて俺に何かをうったえる相棒は何処か必死そうだった。
「…逃げたく、ないのか」
こくり、と黄色い頭が上下にふれる。
俺がコイツと出会ってからより、コイツが生まれてから俺と出会うまでの時間の方が断然長いわけで。
コイツも今まできっと苦手とする種族に会いながらも必死で生きてきたんだろう。
その中できっと、コイツなりに自分のポリシーなんかもあったりするワケで。
それを、こんな小さなボール一つで分かったような気になっていたなんて。
俺の今言った他のポケモンだって、必死で生きていて。
それを俺達は、捕まえて、全て分かったような顔をしているんだ。
ただの、エゴじゃないか。
「…ごめん、じゃっく」
相棒は、首をかしげてちぃと鳴く。
その目を見て、俺は相棒に話しかけた。
「俺達で、ニビジムを制覇しよう」
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ぷちっと続きます。