久しぶりのきまぐれ企画・ピカチュウ版『捕獲禁止』縛りプレイ記第六段。
ショウはピンクのを救えるのだろうか。
(なおこの話の辺りに置いて大幅なフィクションを含むことを御了承ください)
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・前回までのあらすじ
ロケット団と遭遇、成り行きで正義の味方に華麗なる転職。
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ずん、と音を立てて沈んだアーボを抜け出て、じゃっくは頬の電気袋をぱちぱちとさせた。
相手の黒ずくめは舌打ちしてこちらを睨み付け、俺はというとそれに怖気付かない程度にはいつもの調子を取り戻していた。
とりあえず自分の手元に引き寄せようと相棒の名を呼ぶ。
「よくやった、じゃっ…」
甘かった。
わずかに体力を残した相手のアーボは最後の力ではりを放ち、それは俺の声に振り向いたじゃっくの背中にさっくりとささる。
しまった、という思考に至るまでに随分時間がかかった気がした。
「戻れ、じゃっく」
嫌がられるのは承知でボールに黄色い体を収める。
「大丈夫か」
ボール越しに話し掛けると、その口からちー、と衰弱した声が漏れる。
どくばり、だ。
気付いた瞬間己の迂闊さを呪いたくなった。
「頼んだ、きんぐ」
これ以上じゃっくを戦わせるワケにはいかない。
腰につけたボールからきんぐを出すと相手の男は一瞬固まった後ゲラゲラ笑いだした。
「最弱ポケモンって有名なコイキングじゃねぇか」
さ、最弱?
思わずぽかんと口を開ける俺の横できんぐがピチピチとはねる。
「こんな弱いヤツ連れてる甘いガキが、偉そうな口聞くんじゃねーよ」
ひとしきり笑うと男は低い声で怒鳴った。
…まぁ確かにさ、相手のラッタは凶悪そうな面構えだし、対してこっちはめちゃくちゃアホっぽい顔はしてるワケだけど。
「アーボ、どくばり!」
遅いよ、全然。
「きんぐ、体当たり」
アーボの攻撃を紙一重でかわすとその横腹に一撃をくらわせる。
残りわずかなHPはその一発で無くなった。
「な…」
驚いた様な表情を浮かべた相手に、俺はさも当たり前の様に言い放つ。
「きんぐは、強いよ」
こんな新米トレーナーに噛りついてでも付いてきてくれるなんて、弱いヤツには出来ないよ。
「ちっ、ラッタ!!」
相手が次のポケモンを繰り出す。
「もう絶対許さねぇ!!」
ラッタの速度はさすがに早くて、指示を出すのが遅れる。
…間に合え!!
「きんぐ!!」
突然、洞窟内にまばゆい光が溢れる。
その場に居た全員が動きを停止せざるをえない位、強い、強い光。
目を細めながら光源を探すと、光っているのはなんときんぐの体だった。
リュックに入れてた図鑑がピコピコと鳴る。
「これって…」
進、化?
脳内を二つの漢字が、そしてそれに関する本で読んだだけのなけなしの知識がくるくる回る。
徐々に収まる光の中に、今までと比べものにならないくらいの大きさの水色の体が姿を表したのを見て、俺達はただただあんぐりと口を開けた。
輝く水色の鱗、数メートルはある巨体、光る牙。
それはまるで小さい頃絵本で見た伝説の龍のようで。
「な、なんだコイツ…」
「…き、きんぐ?」
俺のたどたどしい呼び声に応える様に、目の前の龍は尻尾のひれをピチピチと鳴らす。
図鑑が電子音と供にギャラドス、という単語を告げた。
「…は、反則だろ」
すっかり勢いの無くなった相手の声で、現実に引き戻される。
…まぁ、それは若干否めないけれど。
「言ったでしょ、きんぐは強いって」
俺達は新しく覚えた「かみつく」でラッタを一発で仕留めたのだ。
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その後はなんやかんや忙しくてよく覚えていない。
ピンクのを助けてからダッシュでポケモンセンターでじゃっくを治療してもらって、今再びお月見山の麓に居る。
使えなかった水鉄砲の技マシンも今のきんぐには使えるようになっていた。
うん、幸先良いじゃんか。
「さて、今度こそ越えるぞ!!」
目指すはハナダシティだ!!
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まーだーつーづーくー