シルバー、ハッピーバースデー!
(大遅刻もいいとこだよ!!)
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温かい布団にくるまって時計を見たのと同時に窓からゴールドとクリスが入ってきて、状況を理解しないうちに眠り粉で意識を奪われ無理矢理拉致られた、これが昨日の朝6時。
目が覚めたところでまたも無理矢理買い物に付き合わされて(とはいえクリスマス用ケーキなどというモノをちゃっかりと購入して、)俺達三人で小さなクリスマスパーティーを始めたのが昼頃。
午後3時を回った辺りからホウエンとカントーから先輩後輩も続々とやってきて、もちろん姉さんもいつもどおりプリンに乗って登場して、何に驚いたって来客全員からプレゼントを手渡された時には思わず言葉を失ってしまった。
「なーに驚いてやがる」
「そうよ、貴方の誕生日でしょ?」
そう言って楽しそうに笑うアイツ等の顔が忘れられない。
まぁ、そこからは無礼講の大騒ぎで夜通し遊んで、帰ってきたのは日付が変更した頃。
家で眠っている人を起こさない様気配を殺して部屋のベットまで来ると、疲労と先程飲まされた大人の飲み物のせいか、服を着替えもせず布団に倒れこんだ。
こんなに気分が高揚してるのは何時ぶりだろうか。
自分には一生関係が無いと思っていた行事に参加するばかりか、主役になってしまうとは思わなかった。
だいたい今日はクリスマスイブな筈だろ、アイツ等恋人居ないのか。
小さく呟きながらも、口元が笑みを浮かべてるのが自分でも分かる。
目蓋を閉じて気持ち良い倦怠感に身を任せると、夢も見ない眠りに落ちた。
朝起きると、毛布がかけてあった。余計な手間を取らせたことに気付いて、少し反省する。
昨日の楽しかった思い出は消えないものの、やはり祭のあとの朝。
若干の淋しさを感じながら服を着替える途中で、ベットの横に見覚えの無い包みを見つける。
赤の包装紙と緑の紐でラッピングされた、簡素な文字で「シルバー宛」とかかれた付箋の貼ってある何か。
たぶん、見つけた直後、昨日の倍は驚いたと思う。
恐る恐る包みを解くと中からは茶色の、仕立ての良さそうなセーターが出てきた。
薄いシャツの上から袖を通す。
思った以上に、暖かい。
居ても立ってもいられず、それを着たままばたばたと階下に駈け降りる。
「っ、お、父さん」
目当ての人物はソファに座って新聞を読みながら珈琲を飲んでて、俺を見ると一言、
「着たのか」
とだけ言った。
「うん……凄く、保温性に優れていて、良い」
「気に入ったならいい…朝は外に食べに行くか」
「、うん」
コートは羽織らずに昨日姉さんから貰った長いマフラーと手袋だけ上から取ってきて身につけると、靴を履く。
用意をおわらせた父親が後からやってきて、二人で外に出ると鍵をかけた。
「何を食べる?」
「…何でもいい、食べるのに疲れないところ」
「なら、近所の喫茶店にするか」
二人並んで朝の道を歩く。
痛いくらい冷たい空気がなんとなく清々しくて、自分を包む暖かさにほくほくとしながら隣を見上げると、視線に気付いた相手が
「何だ」
と聞くから
「なんでもない」
とだけ返した。
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メリークリスマス。
過ぎたけど。