話題:行くあてのない気持ち
今回は、××さんがメインです。話題も私のことではないです。
三連休の中日、会社の同期と会うために出かける予定だったので、その日の夜と翌日と、出雲さんにお世話になりました。
××さんがそちらの店舗からまた異動されることになり、今度は遠いところだったので、絶対会いたいと思いまして、一日目の朝同期に会う前に会う約束を取り付けました。
が、時間になっても××さんは来なくて、連絡をしても返事がなくて、私も次の予定がありましたから、お会いできないまま電車に乗って駅を後にしましたら、電話が。車内で出られなかったので、メールをしました。寝坊したとのことで、夜に会っていただくことになりました。何事もなくて良かったです。
その夜、出雲さんに駅まで迎えに来ていただいて、一緒に××さんと合流しました。
「××さん、異動しちゃうんですか……しかも遠いし」
「そうなんですよ、私もまさかそっちに行くとは思ってなくて」
「寂しい……いつでもここに来たら会えると思ってたのに」
「大丈夫ですよ、ディズニーランド絶対一緒に行きましょうね!」
などなど、しばらく駅で立ち話をしてたのですが、出雲さんが気を利かせてくださり、近くの喫茶店へ入りました。
××さんは少し複雑な恋愛をされています。
××さんの好きな人は(バイトを辞めた私には元)上司なのですが、二人は二年前までお付き合いされてました。
が、この二人は喧嘩しては別れてヨリを戻すというのを何度か繰り返し、二年前はついに本当に別れてしまいました。でも、××さんは今でもその元彼さんが大好きで、他の人の事は考えられないそうなのです。でも、自分といると上司にためにはならない、と考えて、幸せになってほしいと身を引いたとか。
ちなみに上司の方は、「お前、俺と別れたら絶対後悔するぞ、俺にそんな(別れる)つもりはないから」と何度か説得を試みるも、××さんが折れなかったので、「(別れる)覚悟を決めた」というようないきさつらしくて。どっちも好きじゃん! 何で別れたんだとずっと思っております。
一度、上司とのことを忘れられないながら、新たな彼氏が出来たこともあったのですが、そちらとも別れてしまって。その方、××さんに忘れられない人がいることは了承していたようですが、それでも、××さんの方が申し訳なさに堪えられなくなったそう。
そんなこんなで二年経って今になりますが、先日バイト先の飲み会にお呼ばれした際、××さんと上司がどちらも来たんです。で、そういった関係なのを気にした、酔った駿河さんが二人を無理矢理その場で対面に座らせ、気まずい空気が流れ……。
二人の間に当然会話はありませんでした。
私はずっと彼女が心配でした。
駿河さんのしたことは本当に無理矢理だったけれど、よりを戻すとまではいかなくても、何らかのきっかけがあれば、話くらいは出来る間柄になれるはずですし、もっと初期に仲直りしていれば交際も続いていたはずなんです。お互いを理解しあって、必要としていたのに。
××さんは弱みを人に見せない人ですが、その上司にだけは見せていました。上司もそう、××さんにだけ悩みの相談もしていました。
いつもお話を聞く度、今でも好きだしつらい、とおっしゃっていましたから、何とかしないと! とずっと思ってました。あ、私が何とかしないと、と思ったのではないです。××さん自身が、です。行動を起こさないと、何も変わらない。
そのつもりだったんですけどね。でも、まぁ二年そういう話を聞き続けた訳です。私がとうとう耐え切れなくなってしまいまして。
××さんに、LINEを送らせてしまいました。
しばらく返事来なかったんですが、ちゃんと返事も来て、何とか仲直りは出来たようです。良かったです。
なかなか返事がこない間、別の話をしていました。
ちなみにすっかり存在感ないですが、出雲さんも正面にいますのでね。
「私、上司と結婚の話まで出てたんですよ。仕事も辞めるつもりでいましたし」
と××さん。私はその話聞いてたので知ってました。ただ、出雲さんもいるしあまりに××さんと上司の話題だけにすると出雲さんを置いて行ってしまうと思って(すでに散々置いて行った感はありますが)、
「××さん、着るなら絶対ウエディングドレスですよね! すごく似合うと思います」
「ですねぇ、ドレスがいいです。でも私、ぶっちゃけ結婚はいいから、子供が欲しいんですよ。上司にもそう言ってあったんですけど、ショックって言ってましたね」
「お二人の間のお子さんなら絶対美形だと思ってましたよ。ねぇ、出雲さん」
「そうでしょうね」
「沢さん、沢さんはどうなんですか。結婚願望ありますか?」
「おっ……と……」
出雲さんの目の前で、答えにくい質問!
「えーっと、答えにくいですね……でもすみません。ないです」
出雲さんの目は(いつもですが、それ以上に)全く見ることが出来ませんでした。ドレスは着たいけど結婚はなぁ……。出雲さんとにしろ、そうでないにしろ、私の中では全く現実味を帯びない言葉です。でも、そう言い切ってしまう訳にはさすがに行かないので、
「まだお仕事も慣れてないですし、お金もないし……何よりこの距離ですし、あんまり考えられませんね」
と一応フォローはしたつもり……。出雲さんの顔は見られませんでした。××さんはなるほどっておっしゃってましたけどね。いや、年齢的にもそろそろ気にしてる(っぽい)人の前でその話はダメだ、と思いつつ、××さんはそんなことご存知ないですからね。仕方はないのですが。ちょっとひやっとしました。出雲さんも、特に何もおっしゃいませんでしたけど。
そうこうしているうちに閉店の時間になり、××さんをお家まで送ったところで、上司から返信があり、仲直りまで見届けられました。私、そんなにお節介な方ではないはずなんですが……今回は口を出してしまいました。でも、とりあえずは良かったです。
「沢さんって、ヤキモチとか妬かないんですか?」
「ヤキモチ? どうでしょうね……今のところはないと思いますね」
「聞きましたよ、ディズニーで可愛い女の子一緒に見てたって。それ、出雲さんも他の女の子に可愛いって言ってるんですよね?」
「あ、でもそれは私が『あの子可愛いです、ほら! 何で見てないんですか! あの子!!』ってなるから、それを無視されたり流されたりする方がいやですね」
「出雲さんはないんですか?」
「そりゃあ、男性に向かってカッコイイとか、キャーキャー言われたらあれなんでしょうけど……三沢さん、女の子ばかり見てるからなぁ」
「出雲さんの知り合いに可愛いお姉さんがたくさんいて、うらやましいです」
「舞台の前に、僕のオススメはこの子ですよ、ってパンフレット見たりしてるし」
「本当に可愛い子ばっかりですよね、いいなぁ」
「……自分は可愛い女の子に抱き着けるけど、僕は無理ですよね! って嬉しそうにしてるし」
「××さん!!(××さんに抱き着く)出雲さん出来ないでしょう、××さん柔らかいしいい香りしますよ。可愛い女の子ってなんでみんないい香りするんでしょうね」
「沢さん、出雲さんが一番抱き着きたいのは沢さんですよ」
「ここにこんな可愛い子がいるのに。××さんの方がいいですよ、あげませんけどね!!」
出雲さんは苦笑してましたが……。でも勿論男性ですから、可愛い女の子はお好きなので、ちゃっかり私と××さんが抱き合ってるツーショットをiPhoneで撮ってました。
「沢さん、出雲さん。私、お二人のふわふわした感じすごく好きです」
「ふわふわ?」
「お似合いですよ。出雲さん、本当にいい彼女出来ましたね」
「はい!」
「え!? ……あの、ありがとうございます……」
こういう時の出雲さん、言い切るし素敵な笑顔されるんですよね……。ありがとうございます……。
そんなこんなで、××さんとお別れして、出雲さんのお家へ帰りました。今回は××さんメインでしたので出雲さんはあんまり登場しませんが。
翌日、横浜中華街へ行く約束でしたので、帰ってお風呂に入ったらおとなしく寝ました。