「イグニッション!!」
男はその声に反応し、攻撃をやめて声の方向を向いた。
……逃げるなら、今しかない。
「……スラッシュ…ロンド……」
無我夢中で使った技は、今まで使い慣れてきた魔弾ではなく。
使うことをためらっていた、貴種ヴァンパイヤとしての技だった。
自分がその技を使える理由を考えたくなくて、使いたくなかったけど、この男から逃れるには使うしかなかった。
攻撃を受けた男は驚いていたが、何かに気づいたように笑みをこぼした。
「そうか、やはり貴女は私の娘なのですね。使ったこともない技を使いこなすとは、流石ですよ」
男が話していると、先ほど声のした方。
今の私の後ろから人の姿が現れた。
「そこまでだ、ホワイト・ゴールド」
「おやおや、ようやく現れましたか銀誓館学園の皆さん。……おや?1人ですか?」
顔を上げてみると、そこには一人の少女がいた。
「一人じゃ不満か?」
その少女は臆することなく、男に語りかけた。
「いえいえ、私にとっては好都合です。めんどくさい人間が少ない分には」
そのやり取りを見守っていると、少女が私に話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「…あ……はい…大丈夫です……」
「そうか、なら俺があいつと戦ってる間に逃げてくれ」
どうやら、少女は私を助けてくれるみたいだった。
だけど、私はあの男を自分で倒しておきたかった。
「その娘を助けるのですか?言っておきますが、私の娘ですよ?」
私と少女が話していると、男が割り込んできた。
少女はその言葉を聞くと、私の方を振り向いた。
「本当なのか?」
私には、ただ頷くことしか出来なかった。
「そうか、だったら」
少女は背丈ほどもある大剣を構えなおして、
「お前を倒してから考える」
そう、男に宣言した。