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冬の思い出 8

「大丈夫か?嵐野さん」
そう声が聞こえたときには、ホワイト・ゴールドに蹴りを入れていた。
「遅いよ、エアライダーならもっと早くこいよ」
そう少女が文句を言うと、次には敵一直線に爆発が起きた。
少女が私の手を引いて、走りだした。
「一旦引いて、体勢を立て直すぞ」
でも…という言葉を飲み込んで、私は彼女の後に続いた。
いくら虚勢を張った所で、疲れていることには変わりない。
そして、いま来てくれた人たちは私なんかよりもずっと戦いに慣れてる人たちだ。
そうして最前線から遠のき、私たちは一息ついた。
「……あ…ありがとう……ございます……」
「いいっていいって。それよりもあいつ倒しちゃうけどいいか?」
一瞬何を聞いているのか分からなかったけど、すぐに理解した。
「…いいですよ……どうせ……父親だと思っていませんし……」
私の父親は家にいる一人だけだから。
「ふーん、そうか」
「…あなた方は……銀誓館学園の…方たちですか…?」
「そうだけど、なんで知ってるんだ?」
「…さっき……あの男が…言っていましたから……」
そう言って、男のほうを見ると戦闘は終わりかかっていた。
銀誓館学園の援軍は強力で、男は既に倒れかかっていた。
「その話は後にしておいて、とりあえずアイツを倒すぞ」
そう言って、嵐野さんは男のもとへとかけていった。

冬の思い出 7

「イグニッション!!」
男はその声に反応し、攻撃をやめて声の方向を向いた。
……逃げるなら、今しかない。
「……スラッシュ…ロンド……」
無我夢中で使った技は、今まで使い慣れてきた魔弾ではなく。
使うことをためらっていた、貴種ヴァンパイヤとしての技だった。
自分がその技を使える理由を考えたくなくて、使いたくなかったけど、この男から逃れるには使うしかなかった。
攻撃を受けた男は驚いていたが、何かに気づいたように笑みをこぼした。
「そうか、やはり貴女は私の娘なのですね。使ったこともない技を使いこなすとは、流石ですよ」
男が話していると、先ほど声のした方。
今の私の後ろから人の姿が現れた。
「そこまでだ、ホワイト・ゴールド」
「おやおや、ようやく現れましたか銀誓館学園の皆さん。……おや?1人ですか?」
顔を上げてみると、そこには一人の少女がいた。
「一人じゃ不満か?」
その少女は臆することなく、男に語りかけた。
「いえいえ、私にとっては好都合です。めんどくさい人間が少ない分には」
そのやり取りを見守っていると、少女が私に話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「…あ……はい…大丈夫です……」
「そうか、なら俺があいつと戦ってる間に逃げてくれ」
どうやら、少女は私を助けてくれるみたいだった。
だけど、私はあの男を自分で倒しておきたかった。
「その娘を助けるのですか?言っておきますが、私の娘ですよ?」
私と少女が話していると、男が割り込んできた。
少女はその言葉を聞くと、私の方を振り向いた。
「本当なのか?」
私には、ただ頷くことしか出来なかった。
「そうか、だったら」
少女は背丈ほどもある大剣を構えなおして、
「お前を倒してから考える」
そう、男に宣言した。

冬の思い出 6

「銀誓館学園……?」
私が唖然としていると、男は高らかに話しだした。
「おや、銀誓館学園の諸君ではなかったのかね。これは失敬」
今日だけですでに何回も聞いている、銀誓館学園という言葉に反応した。
「私は、ホワイト・ゴールド。高貴なる貴種ヴァンパイヤだ」
…さっきまでいた従属種はつまり、こいつの手下だったというわけか。
「ただしかし、疑問が残る。この周辺には力を失った魔弾術士の一族がい

るだけで、能力者などいる筈もないのだが」
おそらくその一族とは、私の一族のことだろう。
「あぁ、そういえば。昔に戯れで力を与えたこともあったかな」
「……どういうことです?」
沈黙に耐えられず、言葉を出してしまった。ただそれに男は反応もせずに

続けた。
「結果どうなったか、知らなかったし知ろうともしなかったが、今ここで

会うことができるとは。運命としか言い用がないな」
不意にに襲った嫌悪感。
この男を受け入れてしまっては、私が壊れてしまいそうになる。
「……だまれ……」
「だまれ、ですか。残念ですね、せっかくの親子の会話を楽しもうとして

いるのに…」
「だまれっ!!」
全力で打ち込んだ炎の魔弾は、全力であったにもかかわらず、片手で撃ち

落とされてしまった。
「私の高貴な血が入ってるというのに、この程度ですか」
「ふざけるな!!」
「ふざけてなどいないですよ。我が娘よ」
次の魔弾は、弾かれもせず手のひらで吸収されてしまった。
「実の父親に2回も牙を向くなんて、これはお仕置きが必要ですね」
次の瞬間には、私は中に浮いていた。
「この近さなら当たるかもしれないですよ?どうです?」
簡単にわかる挑発。でも、私に力は残っていなかった。
「もう打ち止めですか。嘆かわしい」
そう言うと、男の周りに無数の吸血コウモリが現れた。
「バットストーム」
男が言った瞬間、
「イグニッション!!」
森のほうから声が聞こえ、男の攻撃は止まった。

冬の思い出 5

森に入ると、そこには従属種バンパイアがひしめいていた。
「……炎の魔弾」
自分の道を作るべく、魔弾を撃ち放ってけちらしていく。
森の中心に行かなくてはと、何かが私を追い立てる。
「それでも中心に行くには、数が足りないですね」
自分の能力の限界が意外と早いことを歯がゆく感じた。
それでも進まなくてはいけないと、そう信じた結果
「駆け抜けましょう」
強行突破に躍り出た。
ひしめいていたとしても、抜け道はかならずある。
そう信じて、敵を倒さずに走り抜けた。
「……っ!!」
森の中心に辿り着こうというところで、囲まれてしまった。
「…しょうがないですね……」
そうつぶやいて、炎の魔弾を従属種バンパイアに向けて放った。
そうしてポッカリと空いた道を駆け抜けていく。
ただ、中心に行かなくてはいけないという気持ちだけで。
気がつくと、森の中心の空き地へと出てきた。
「……ようこそ。銀誓館学園の諸君」
男が一人、存在していた。

冬の思い出 4

転校の話をしてから、私は自分の部屋から防寒着をもって散歩していた。
そうして考えるのはやっぱり転校のこと。
親の思い通りに動くのはシャクだけど、お婆様のこともあるし。
「結局は自分で決めないといけないみたいですね」
ここの学校の友達と何かしら揉め事があるわけでもない。
だからといって未練があるわけでもない。
転校しない理由を挙げるとしたら、それはただの意地なのだろう。
親のいいなりにはなりたくないと言う。
「それでも、両親がいないと生きていけない訳で」
銀誓館学園がどんなところかも知らないけど。
ここよりも、よくなるかどうかもわからない。
「……さむい」
寒さには慣れているはずだけど、今の北風は寒かった。
ふと北の森を見てみると、異常な量のコウモリが飛び回っていた。
「一応見に行ってみましょう」
この土地を守るのが、私たち一族の役目。
能力を持っているのならなおさら、とお婆様に言われてきたから当然のこと。
私は防寒着の中にもっていた魔導書を確認して、森へと向かった。
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