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苦悩と、初めましてと、

午前1時、
目が冴えて仕方ない。
起きる時間までまだ三時間なのに。
どうしたんだろう?
まだ真っ暗だ。
暗いと悪いことを考えてしまう。
 
何かがいきなり出てきて死んでしまうとか。
何かがこっちを見ているような。
何かが俺を呼んでるような。
その何かはわからないけれど、きっと恐ろしいモノなんだ。
 
嗚呼、今日も誰かに呼ばれる夢を見た。
悲しげな瞳と声で、あきらあきらと呼んでくる。
恐ろしいとは違う。
懐かしい声。
誰かと聞いたら直ぐに闇が晴れて目覚める。
 
けど、今日は違うことを言っていた。
 
死にたい、しにたい。
此処から出してください。
 
何に捕まっているのか、何故死にたいのか。
何故俺を呼ぶのか
 
また明日夢を見れば。
 
何かわかるはずだ。
 
─────
 
午前2時、
目が冴えてきた。
今日の夢は、
 
もうイヤだ。もうイヤだ。
出たい、此処から出たい。
 
三度目の正直とはいかなかったか。
俺とあまり変わらない年の子だった。
男だな。
其処は嫌がるほど酷いところなのか?
 
ふと思った。
なんで俺は夢のあの子を見て、可哀想とか、出してあげたいとか、考えないんだろう?
 
嗚呼今日も早く起きてしまったな…まだ鍛錬には早いのに。
 
夢も中途半端だ。
 
また明日夢を見よう。
 
──────
 
─泣くなよ。男だろ。─
けど痛いんだ。心も体も。
─此処は何処なんだ?─
屋敷の中。もうあの人達に会うくらいなら、檻の中にでも入りたい!
─あの人達…?─
お前はわからないのか?
 
午前3時、
目覚めが悪い。
頭がまだぼーっとしている。
 
あれは俺だった。
 
剣の鍛錬、知識と基礎の学習、お偉い様への媚びの売り方、礼儀作法、愛想笑い、
 
手の豆がまた潰れた。わからないことがあっては許されない。これが出来ないと俺は生きていけない。相手への印象は大事、微塵も思ってなくてもお礼をする。笑顔は相手を騙す手段。
 
周りの期待、父の弾圧、上からの視線、下からの眼差し、
 
失敗は許されない。自分で責任は取れないだろう。もっと強くなってあの方の力になるんだ。
 
……あの方…?
 
あの方って誰だよ。俺がこんなに、こんなに苦しむくらいあの方って大切にしないといけないのか?尽くしてどうなるんだ?俺に何かそれと比例するほどの喜びをくれるのか?なんで俺が!なんで俺が"あの方"の為に死ぬ教育を受けなければならない!!!俺は小早川彰だ!!!"あの方"の配下の一人なんかじゃない!!俺にはちゃんと意思があるんだ!!俺は操り人形じゃない!!!
いい駒に成り下がるつもりもない!!!
 
俺にだってやりたいことくらいあるんだ!!!
俺に、だって……やりたいこと…?なにそれ…?
俺何かに執着しろなんて言われなかった。
嗚呼、そうだもんな。
生まれたときから、"あの方"のお人形さんだからな。
"あの方"の望むとおりにしか動けない。
 
誰か、かわってよ。
俺はいままで、会ったこともない人のために生かされてたんだって。
可哀想だろ?なぁおいっ!!!
─可哀想?そーゆーのってお前斬ってきたネコさんの方だろ?お前を慰めてやったのに、お返しがあれだぞ。─
あれは父上が…!!
─斬ったのはお前だろ。人形なんかじゃない、お前の為に尽くしてやってると思ってれば、少しは気が楽なんだよ。
 
誰かがお前をほめて撫でてくれるまで。─
 
午前5時
二度寝で寝過ごした…けど、まだ城に行くまで余裕だ。
 
あの俺がいたから、俺は平然と居られたのか。
あれは俺が考えてしまったモノなのか。
全く俺にはわからない。
今は早く主の顔を見てみたいんだ。
きっと迫力あるんだよな。
女とは聞いたけど、豪快とも聞いたんだが…?
まぁ話せばわかるか。
 
「初めまして、彰と申します。姫、どうぞよろしくお願い申します。」
 
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