オレは、幸せ者だ。
優しい家族が、チームメイトが、恋人がいる。
それは、支えてくれる人だったり、切磋琢磨する関係だったり、競い高めあう間柄だったり、それは色々だけれど、どれもオレを構成する大切な一部で。
今日は、いつもは何気ない空気のようなそれらが、一層愛おしくなった一日。
頼りになる先輩も、相棒も、ライバルも。
幼いオレ達の関係はあっという間に崩れて、変わってしまう。
でも、その中でも守れるものも、築けるものもある。
この小さな手で抱えたいくつかのうち、どれか一つを選ぶのはとても困難だ。
なにかのために別のなにかを諦められる聞き分け良くもないし、そうなるのが大人ならなりたくもないと思う。
何かのために伸ばした手が届かないなら。
掴み取った一つを持ちきれないほど、両手がふさがっているなら。
たくさんの仲間の手を借りて、新しいものを手にして、分け合っていけば良い。
時計を見ると、もう日付も変わる頃合いだった。
24時間前には忘れていた誕生日を楽しく過ごせたことに感謝をして、布団をめくる。
ひやりとしたそこは、だんだんとオレ自身の熱で温くなっていくのだけど、それがまるで己自身のようだと考えて、一人笑う。
家族と、仲間と、ライバルと、恋人。
それらに暖められて、消えない温もりを抱いて、そっと目を閉じた。
(明日も、オレのたいせつな人たちが、幸せでありますように)
「じゃ、お休みなさい」
呟きに返る言葉は、ない。