家に帰ると部屋は真っ暗だった
部屋の中なのに息を吐くと白い煙が出てしまう
「さむい…」
こんな独り言を言っても返事もなく、暖房器具に電源を入れて部屋も明るくした
バイト先で貰ったすっかり冷たくなった賄いを半分だけ食べて後はラップをかけた
それから、ユニットバスで身体を流し僕は彼女の帰りを待った
おそらく彼女は誰かのお金でお寿司やお鍋など高級な物を食べている
そして、ユニットバスでは無く大きくて暖かなお風呂で身体を温めて、煌びやかなベットの上で彼女は僕の知らない男に足を広げているのだろう
「ただいま…てち〜」
「おかえり…」
僕とねるの関係は出逢った頃とまったく変わってしまった
男子バスケ部のマネージャーの彼女に僕が一目惚れして、忘れもしない2年生になった春僕たちは恋人という関係になった
なのに、去年秋に彼女の家庭が崩れてしまった
僕は彼女を助け出す事を出来なかった
彼女以外の家族は、ねるを捨てたんだ
みんな蒸発して、ねるに何も告げずどこかへ行ってしまった
彼女はショックで塞ぎ込み、僕は必死に慰めたけど彼女には届かない
だけど、彼女はある時から変わった
いや、開き直ったんだ
“生きるためならなんでもする”
これが彼女のスタンスだ
「てち、ねるベットに行きたいんよ」
「ん、…行こっか」
お酒や香水の匂いをさせて帰って来たねるは、僕の首に手を回してすり寄って来た
お酒や香水の匂いは好きじゃないけど、その奥にある微かに感じるねるの匂いに僕は気持ちが上がった
ベットに自ら進んで寝転んだねるの下品な毛皮のコートを脱がした
コート中はまた肌が多く見える洋服だった
「こんな服似合ってないのに…」
「ふふふ、ねるもそう思う」
僕はそんなねるに苛立ち少し雑に脱がせた
下着姿のねるはいつみても綺麗
だけど…
「また付いてる…」
「Aさん、付けるの好きやけん」
「終わってお風呂入って来たの?」
「入っとらんよ。その方がてち好きやけん」
「…そんなことない」
ねるはいつも左の乳房の下に誰かの紅い印を付けて帰ってくる
僕のなのに
ねるは僕のものだ
どこの誰が
僕は必死にその紅い印の上から自分の印を付けた
見上げるとねるは余裕そうに僕を見つめ頭を撫でるから、少し噛み付いてやった
「いっ、、もう痛いけん、噛んじゃいけん」
「痛くないよ」
「てちはやきもち焼きやけんね〜」
僕の頬を潰すように両手で包み込んだ彼女の手を片手で彼女の頭の上でひとまとめにして、近くにあったタオルで縛った
「昔のてちなら、こんな事せんかったのに」
「ねるの体そこら中から男の匂いする」
「しょーがないけん」
ねるは初めて少し悲しそうな顔をした
この顔を見た時にいつも後悔してしまう
ねるはこんな仕事不本意でしているんだ
僕が分かってあげないといけなかったのに、、
「ごめん…」
「んーん、いいよ」
僕はごめんね、って気持ちがねるに伝わるように、他の男の匂いが消える様にねるの体を舐めた
首からは香水や煙草の匂いがしたし、髪も僕たちの家のシャンプーとは違う匂いがした
「てち、もういいけん…」
「ん、今から…」
僕がその中でもお気に入りなのは、彼女の脇
少し汗ばんでいて、1番彼女の匂いを感じられる
そして、舐めている時彼女が一番嬉しそうなんだ
「てっ、、あっ、、きたっない、やっ」
「いい匂いしてる、んっ…」
「おふ、ろっ、」
「だめ」
ねるに汚いとこなんてないから、安心してよ
そんな気持ちを込めて彼女にキスをして、手のタオルも取った
お互い少し落ち着いて、キスを楽しむ
「ゆりっ、な…」
「舌、だして…」
「んっ、、」
「…っ、、おいし…」
お互いの口元から繋がった銀色の糸はすぐプツリと切れて、彼女の口元を汚してしまった
僕はすぐに舐めて綺麗にしてあげた
彼女を綺麗にするのが僕の役目だ
「下も脱がすね…」
「んっ、、」
「腰少し上げて?」
「あっ、今日ね…」
「あ、、わかったから…言わなくていいよ」
「…ごめん」
彼女の最後の下着を脱がすと、僕はすぐ匂いで気が付いた
彼女はお風呂に入らず帰って来るから、こういうことはたまにある
「出すね…」
「ねぇ、てち、やっぱ…」
ねるは僕を止めようとしたけど、そんなの関係ない
僕のねるの中に残った知らない奴の痕跡なんて、許さない
僕はむせ返る様な匂いがするものを、彼女を綺麗にするために、必死に吸い出す
「やっ、ちょっ、、あぁ、てっ、ち!」
ねるは首を天井に突き出しで声を上げている
ねるが楽しいと思う事も悲しいと思う事全てを、共有したい
「だっ、、あっだめっ……あっ、あ、!」
ねるは一瞬息が止まり、すぐはぁはぁと息を切らした
その頃にはねるの中も綺麗になって、僕は折れそうに小さい彼女を抱きしめた
「ねる…今日はもう寝よう」
「はぁはぁ…てちの、これ、は…どうする、と?」
「…大丈夫だから」
「でも、、」
「おねがい…このまま眠らせて」
「わかった…」
「おやすみ、ねる…」
「おやすみ」
僕のねる
いつかねるを心の底から笑顔にさせてあげるから、ちゃんと守って上げれるようになるから、それまで壊れないように僕がちゃんと綺麗にしてあげる
.