M.side
私だって、正しく生きたい。けれど、正しいことと、あなたを好きでいることが矛盾してしまうのは、どうしてなのか分からなかった
あの日理佐が夜中に帰って来た日、理佐は私に背中を向けてベットに入った
私はここで自分の部屋に帰ると理佐がこのまま居なくなりそうで、空気読めてないって言われそうだけど、私も理佐のベットに潜り込んだ
何か言われるかと思ったけど、理佐は何も言わない
何か言ってくれた方が気持ちは楽だったかもしれない
理佐は寝れない様子だったのに、私は無神経だからかな、寝てしまった
「居ない…」
そして起きたら時計の短い針は頂点に近くて、ベットには私だけがポツンと居るだけ
私は結局理佐がいないと、1人ぽっちでなんの価値もない
寂しくて、どうしていいか分からなくて迷子みたいな気持ちになる
気分が落ち込んだまま、学校に行くと理佐は居た
窓際の一番後ろの席なんて、クラスのボスみたいな席に座って、外を眺めて、いや…どこか遠くを見つめている
なんて哀しい顔をしてるんだよ
私がそんな顔をさせてるのかな
それだったら嬉しいな
私とはその後、少し目が合ったけど、おせっかいなオダナナに手を引かれた
振り返って理佐を見てもまだ私を見ていて、理佐は何を考えてるの?
「ほら手を広げてて」
「え、何すんの?」
「文化祭の衣装の採寸するって言ってたじゃん」
「あぁ、、なんの男装するの、私」
「チャラい男子高校生役」
「ヤダ!そんなの、、もっと硬派なのがいい」
「どうしたの急に、、チャラいキャラじゃん」
「そんなキャラに見られてるから、見返したい」
「誰を?」
「……みんな」
オダナナはチンプンカンプンって表情で呆れて、話しかけてこなかった
理佐にチャラいって思われてるところを払拭したいんだ
あの日の理佐とSEXをした後、理佐は私への態度は変わらなかった
「おはよ、まなか。学校遅れるよ」
「……」
「怪我の絆創膏変える?」
「…いい」
「あ、そう」
前日のことが無かったかの様に感じた
いたっていつも通りの理佐
なんで、
どうしてっ、
「しっ、志田先輩っ」
理佐のそんな態度にイライラして、私はまた悪い癖が出た
「このまま家行っていい?」
「はっ、、はい…」
私に声をかけてくれた後輩と手を繋ぎ、その子の家まで行った
理佐が悪い
理佐がまるで私達のあの行為を無かったかの様にしたから
どうしてあんな事思ったんだろうか
結局あの後、声をかけて来た女の子をヤり捨てて、その子が友達の間で騒ぎ立てた。
すると女っていうのはすぐ噂がまわって
私に貼られたレッテルは、女好きのクソ野郎
理佐は呆れて何も言わなかった
いつもみたいに私を笑う事もなくて、何も言ってくれなかった
私はあの時に、
理佐に見捨てられたのかもしれない
そう考えると辻褄が合って、怖くなった
「何の男装にするかは、当日まで衣装係だけの内緒だから」
「そこをなんとかっ!」
「ダメだって、そもそもオダナナが愛佳に男子高校生って話した時点でダメだし」
「そこもなんとかっ!」
「今から変更?!んーーー」
放課後、衣装係の虹花に理佐が何の男装するか、私のチャラい男子高校生役を変更して欲しい事を頼むと、何か色々言われた
結局私の衣装を変更する事は了承されたけど、理佐は何をするんだろう
またどうせ理佐はモテるんだろうな
廊下で話していて、少し遅くなって教室に戻ると理沙の鞄はもう無くなっていて、また置いて行かれた
私は行くとこも無いし、テクテクと自宅に向かおうとスマホにヘッドホンを接続しようのしたら、ベリカからLINEが入っている
珍しい
退院したのかな
「病院に来て欲しい」
ベリカは規則は絶対守る子で、病院内にいる時は頑なにLINEなんてして来ない
少し疑問に思いつつも、分かったと返信して病院に向かう
日が落ちるのも早くなって、赤みが多くなった道を歩いて考えるのは理沙のこと
いや、私のことなんだけど
同性ってなんでこんなに壁が大きく感じるんだろう
いつも女の子と遊んでるのに、理沙の事となるとまた違う
周りの目とか、親とか、将来とか…
あぁ、私って重い
ベリカの為に病院の中の売店で買ったパックのココアを持って病室お見舞いに行くと、部屋のドアには面会謝絶の文字があった
「なんで、、」
この文字の意味は馬鹿な私でも分かる
ベリカに何か起きたんだ
持っていたココアを落としてしまったけど、そんなの気にしてられない
「ベリカっ!!」
シューシュー
ドアの向こうには沢山の管が繋がったベリカが居た
いつもより、小さく見えて消えて無くなりそう
「まなっ…か?」
「ベリ!!なんで?!」
力なく無理に笑うベリカを見て、馬鹿な私でも分かった
ベリカはもう長くないかもしれない
「まなかっ…」
「なに?どうしたの?」
「すきっ、、だよ」
「えっ…」
砂時計の砂は一度落ち始めると止まらなくって、止め方も知らない私は無力だ
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