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118日 4話


R.side


思い出を積み重ねていけば、繋がらないはずの未来にも行けるような気がしてた




「これ売れ残りのパン」

「おぉ!!!美味しそう!食べていいの?」

「どうぞ」


バイト先で貰った売れ残りのパンを愛佳は目を輝かせて、食べている


「うまっ!これマジでうまい!理佐には絶対やんないから」

「大丈夫、いらないから」


愛佳の口の横に付いたマヨネーズを指を拭って、その指を舐めた

愛佳と関節キス


「なに?付いてた?」

「うん、付いてた」

「ワザと付けてたのに」

「なんで?」

「んーー、後から舐めたら美味しいから」

「きもー」


けたけた笑いあって、道をてくてくと歩く

こうやって愛佳と過ごす何気ない毎日が私の心を穏やかにする

けど、心のどこかに激しく脆いモノが私をおかしくさせる


「ベリ起きてんのかな」

「さぁ?どうだろうね」


河川敷の側にある大きな病院の三階の右から二番目の窓に、梨加ちゃんがいる

私達の三人目の幼馴染


「んしょっと、、」

「持って来てなかったら、マジで置いて帰るからね」

「あるある、いつも入れてるから」

「愛佳はそういうとこ信用ならないし」

「行こうって言ったの理佐だし」


愛佳はゴソゴソと鞄を漁り、モノを探す

愛佳の鞄をは汚いからお目当てのモノがすぐ出てきた事なんてない

また片付けてあげないとな


「あったあった」

「ん、なら合図して」


探してたのは小さい懐中電灯

その懐中電灯で梨加ちゃんの部屋に光を当てる


「おりゃおりゃおりゃ」

「ちょっ、下の階の人のとこまで光入ってるから」

「難しいんだもん」


梨加ちゃんは携帯電話を持ってるけど入院してる間は使えないし、昔からこの方法を使っていた


すると、部屋の窓がガラッと開いた


「理佐ちゃん、、まなか、、」


パジャマ姿のまま梨加ちゃん


「おっす!!!ベリ調子はどう?」

「んー…少しいい」

「そっかそっか、理佐またバイト始めたんだよ!ね?」

「そう、パン屋さん。暑くて大変」

「ふふふ、理佐ちゃんが焼いたパン、食べたい」

「私さっき食べた!」


梨加ちゃんは私達より3つ年上なんだけど、昔から私達が梨加ちゃんを守ってきた

生まれた時から病気を持っていて、私達の助けが無いと梨加ちゃんは生きてけないだろう

梨加ちゃんはいつも、私達の少し後ろを歩いていた

けど存在は私達にとって、道標である

こうやって3人のバランスは保ってきた


この関係を私の気持ちは壊そうとしている

誰1人欠けてもいけないのに


「ベリ、アオコは〜?」

「ベットに、いるよ?」

「アオコぉ〜!」

「ちょっ、うるさい」

「いって!叩くなよ」

「ふふふ」


私はこの恋の終わりを、どこで見つければいいのか分からない




118日 3話



M.side

「もう忘れてもいいんだと、言い聞かせていないと、いつまで経っても君が夢の中で笑うから」現国の授業でたまたま耳からスッと入ってきた言葉は、私の胸を突き刺した


目を覚ますと、この部屋に来た頃より暗くて、窓から射す街灯の灯りだけだった

どのくらい寝たのだろう

理佐の帰りを理佐の部屋で待つ

暗くて、理佐が居なくて、私の心を掻き毟るような不安や寂しさがふつふつと湧き立つ

私達は玄関など使わなくともこうやって、ベランダを乗り越えれば会える距離

多分50cmくらい

けど、実際心の距離は100mくらいあるんじゃないかな

100mって体育の授業で走ったけど、果てしなく遠い距離


「理佐…」


会いたい

触れたい


独占欲なんて無いのに

全部理佐にだけ





「よっす」

「、、あ」



理佐の部屋で大人しく待てず、理佐の新しいバイト先に行ってみた

すると、大通りに面した可愛らしいパン屋さんで働いていた

外から見る理佐は困った顔で、無理やり笑顔を作って接客をしていた

嫌なら私がしてあげるよ

けど理佐はそんな事望んで無いのだろうな

嫌がるだろうなって思ったけど、来た事を理佐に知らせたくて、店内に入ると眉間に皺が寄った


「何しに来たの」

「元気かなって」

「昼会ったし」

「まぁまぁいいじゃん!理佐が作ったパン食べたいし」

「並べてるだけ」

「んなら、理佐が並べたパンが食べたくなったの」


そんなに睨まなくってもいいじゃん

あーこわ


「とりあえず、裏回って裏口のところで待ってて」

「あいよ」


もうすぐ休憩だから、裏で待ってろって事ですね

はいはい、理佐様には逆らわないんです、あたし


裏口とは本当に店の真後ろで、表とは全く違って薄暗くて、汚い

ハリボテじゃん

裏口の階段に腰掛けて内ポケットからタバコを取り出して一本取り出す

口に咥えてライターに火を付けて、ひと吸いすれば肺に来る煙


ガチャ

ガンッ


「たっ!!」

「あ、ごめ」

「つぅーーーっ!!痛い!!」


理佐が急にドアを開けるから、私は背中を思いっきりぶつけた


「マジで怪力過ぎかよ!いってー!」

「ごめんって言ってんじゃん」

「思ってないね!」

「うるさい」


理佐は一本ちょーだいって私のタバコを取った


「あげるとか言ってない」

「ケチくさい」

「寿命縮むよ」

「ふーーん」


私達の周りにプカプカ白い煙が浮く


「このまま梨加ちゃんのとこ行こっか」

「理佐が疲れてなければ」

「あと2時間くらいどこかで時間潰してて」

「わかった」



じゃあ、いい子で待っててね。


理佐は私の頭をひと撫でし、仕事に戻っていった

そんな事されると

そういう事するから

全部理佐が悪い

どーせまた今夜、私の夢に出てくる理佐が悪い



小さい恋人。2話(りさねる・志田ベリ)

りさねる 2


M.side


「ベリ起きて、朝ご飯行こうよ〜」

「んー…5分、、、」

「さっきも言ったし!」


昨日夜からベリの部屋に入り浸って、ちょーーっとだけイチャイチャして、寝た

でもベリは起きない


「アオコ、お前の主人寝坊助だな」


まぁアオコは話せないんだけど


コンコンッ


「はーーい」


先に顔でも洗っておくか、と思って立ち上がると聞こえたノック

来るのはメンバーか寮母さんだし、何の警戒心もなく開けた

警戒心なんて要らないし

普通は、、

「やっほ」

「あ、ねる。おはよう、どうしたの」

「ちょっと部屋入れてくれる?」


ねるの上目遣いにドキっとした瞬間

ねるの腕の中の異物に気付いた


「………」

「ちょっと愛佳にね、聞きたい事があって。とりあえず座って」


ここベリの部屋なんだけど、ねるがすっごい強気というか、ちょっと説教が始まりそうな雰囲気


ていうか、私はその異物に開いた口が塞がらないってやつよ

この言葉はちなみに、織田奈々に教えて貰ったんだけど


「朝起きたら、理佐が小さくなってたんだけど、理由知ってるでしょ?」


ニコと笑うねるに怖ろしさを感じた

その腕の中で指を吸って寝てる理佐

マジで可愛い

神!!!

私とベリで育てる!!


「違うの!!あの、、違う事無いんだけど、、あの、、、、ごめんなさい!!!」


ここは素直に謝るしか無い


「どうゆうこと?」


ねるの背後からゴゴゴッって何か音がするけど、聞かなかった事にしよう


「かくかくしかじか、、という訳でして」

「ふーーん、なるほどね」


まぁつまり、あたしがベリに使ってみよーって買ってしまった何か怪しい薬〔幼児化〕をベリが角砂糖と間違えて理佐に飲ませた。

そういう訳でして


「ふぇーん」

「あ、泣いた」


理佐はパチッと目を開けて泣き声をあげた


「どうしたの?理佐?寝てていいよ?」

「グズッ、、ねるもぉ、、ねるもいっしょがいいのぉ〜」

「はいはい、でももうちょっと待っとってね、愛佳に話しつけないといけないけん」

「やだぁのぉ、、、まにゃか、、やだぁ」


キューーーーーーーン


「ままままま、まにゃか?ってあたし?ねぇ?あたし?」

パシッ

「いって!」


ねるに抱かれてる理佐が可愛い呼び方をしてくれるから、ニヤけを抑えれないまま顔を近づけると小さい手のビンタを食らった

けど、こんなのヘッチャラだし


「ほらおいでよ!!」

「わっ、、わっ!!」


ねるの腕から腕から無理やり理佐を奪って、他界高いをすると、目を見開いて驚いてる小さい理佐

泣き止んだし、めっちゃ可愛いし、最高じゃん


「ほら高いたかーい!!」

「あっ、、まにゃかぁ!!だ、め!」

「楽しい?楽しい?!」

「わっ、、い、や!あっ!!」



そうかそうか、小さい子にはやっぱたかいたかいだよね


「う、、、うわーーーーん!」

「え?あれ?泣いちゃった?え?え?」

「あたし知らないよー」


ねるは愛しの恋人理佐が泣いてるというのに、助けてくれない

ていうか、あたしのせい?

だってあたしねるに睨まれてるって事はそういう事だ

あたしが困ってアタフタして、理佐はギャンギャン泣く

もうザ・クールって名前もどこかに捨てて来たのかもしれない


「赤ちゃん、、おいで」

「うぅ、、あかっ、ちゃん、、ちがう」

「ふふふ、可愛い」

「ぺー、ちゃん、、」


時々現れるお姉さんベリに、あたしの腕からスッと理佐は取り上げられた

いつのまに起きたの

その言葉はグッと飲み込んだ

理佐はベリに向かい合わせで膝の上に座り、ティシュで涙を拭いてもらって、頭をナデナデされてる

羨ましい

ベリは私のだぞ

でも、まぁ私とベリの子供って事にして、、


「たぁっ!」

「理佐どうしたら戻るの?」

「いって、、何日かしたら戻るらしいけど…」


ねるも理佐の事になったら必死だな

今ベリとイチャイチャしてるからって私に当たるなんて相当


「君は、迷子?」

「ちがーうの」

「??」

「りしゃ!わたにゃべ、りしゃ!!」

「……」

「ぺーちゃん?」

「あー、同じ名前?」

「ちがーうの!!」


ベリと理佐の会話は、まるで絵本の中みたい

なんだかふわふわしてて、平和

隣のねるも理佐を見ている目はすごく優しい

こんなにまで優しい顔をする子だったっけ?


「ねぇ愛佳」

「ん?」

「この子、、理佐ちゃんに似てる」



私はそうだね。ってベリに言って、理佐の頭を撫でた

とりあえず、なってしまったのはしょうがない

今できる事はこの小さい理佐を守って、可愛がるしかない


「理佐!!遊び行こう!公園」


嫌そうな顔をした理佐なんて関係ない

今は子供なんだし!

118日 2話

M.side


「タバコを一本吸うと14分寿命が縮むらしい」



理佐とお昼ご飯を食べて5時間目から高校に行くと、生活指導のおじいちゃん先生が呆れていた

ごめんね、おじいちゃん。分かってるんだけどね、カッコつけてないとやってけないじゃん?キャラ的に


「ごめんなさい、明日からがんばるね」


そんな事を言うとまたお説教食らうし、素直に謝った

まぁ先生は信じてないだろうけど



「おぉ、愛佳!今日はちゃんと来たんだな!」

「まぁね」

「理佐は?」

「サボりだって〜」



教室に着いた途端クラスメイトの織田奈那が絡んで来た

こいつはほんとすっごい良い奴

世界中の人間が全部織田奈那だったら平和なのに


「理佐が新しいバイト始めるんだって」

「またぁ?理佐いつもバイト続かないのに」

「それな」

「そもそも何で続かないの?」

「んーーー、さぁ?」

「そういうの将来的に困る、絶対困る」

「だに、から言ってやってよ」



理佐がバイト続かない理由はだいたい、揉め事に巻き込まれて辞めて、その店は出禁になる

だいたいそんな感じ

理佐は優しいし、全てにおいて穏やか

海みたいに大きくて穏やかなんだけと、どこか波があって私の事をユラユラと揺らして、安心させてくれる

それでよく、女の子特有のドロドロでベチャベチャな揉め事に巻き込まれて、傷付く事ばっか

みんなからドSだって言われてるけど、どう考えてもドMのする事

嫌な事なんて放って置いたらいいのに


「愛佳!カラオケ行かない?」

「今日は辞めとく」

「じゃあね〜」


授業が2個しか無いって楽だな

この楽さを感じたら6個なんて無理

理佐なんて1個も受けてないけど


私は耳にヘッドフォンを付けてテクテクと歩く

耳からは周りの音を遮るように大きな音が鳴り響く

何の音楽かはわからない

理佐のCDラックから適当に取ったモノで、小さい頃から理佐の後をこうやって追いかけたら間違いは無かった

昔はよく双子に間違えられるくらいだった

でもいつも、あたしは妹

理佐の真似をして、理佐の後ばかり追っていたから

どこで違ったのかさえ、分からない

けどどこで、違ったかは分からないけど、理佐と私は全く違ってしまった事は分かる

この違いが私を苦しめる


「あ、、、」


学校から歩いて、野球少年達が練習する河川敷の側を歩いてると、お昼に別れた頭が見えた

どこか遠くを見て、なんとも言えない悲しげな顔をしている


「相変わらずめっちゃキレイだし、、」


私はまた見惚れてしまった

もう生きてて何回見惚れたのか数え出したら、キリが無い


理佐が腕時計を見て、どこかに歩き出すまで私の足は地面に打ち付けられていたかのようだった

かなり前から理佐の跡を追うだけじゃ、物足りなくなってきている

私と理佐の関係に名前が欲しい

その気持ちが爆発しないように、その起爆スイッチが入らない様に私は怯えている


118日 1話


R.side


「理佐って噛む癖あるよね」



昔、友達か先生か誰かに聞いた事ある。動物の噛み癖は母親の母乳を求めているのと同じであり、甘えている証拠だって

だから、仔犬によくある癖らしい


「理佐ってシェイク好きだよね」

「……そう?」

「うん、いつも飲んでんじゃん」

「考えた事無かったや」


幼馴染というか、幼稚園の頃から一緒にいる腐れ縁の志田愛佳

愛佳とは家が隣で、二階の自室のベランダで行き来が出来る仲

普通漫画とかアニメなら恋とかになるのかも知れないけど、今のところそんな雰囲気は無いはず

あの1回を除けば

私の初めてを奪ったあの日



「この後学校行くっしょ?」


女子高生御用達のハンバーガー屋さんで愛佳と制服でお昼ご飯を食べていた私たち


「んーー、そっちは?」

「あたしは行くよ?約束あるし」

「また女の子?好きだよね〜」

「あたしモテるからね〜男にも女にも」

「そのうち殺されるよ」

「誰に?」

「……その辺の女」


こえー!ってケタケタ笑ってるけど、絶対怖いなんて思ってない

毎日色んな女の子から女性と遊んで、自由気ままで、猫みたいな愛佳

顔に引っかき傷や叩かれた跡を付けられて帰って来た事なんて、数え出したらキリがない

いつもその傷より、痛々しい心の傷負って部屋に来る愛佳に私はやるせなくなる


「私は帰る」

「何しに家から出て来たんだよ」

「何となく」


愛佳は変なのって眉を不思議そうに曲げた


「ていうかさ、私が殺されんだったら、理佐もさ結構遊んでるんだからそのうち殺されんじゃん?」

「まだその話?」

「だって私だけ死ぬの嫌じゃん?そこも一緒に死んでよ」

「まぁ考えとく」

「あーでも、その時はあたしが先に理佐を殺して追いかけるよ」

「…なんで」

「あたしが知らないような人に理佐を盗られるのなんか嫌じゃん?理佐の最後はやっぱり私見たいし。それに、、」

「それに?」

「いや、何もない」

「ふーん、きっも」



人の事平気で殺すとかマジでヤバイし、私が愛佳に殺されるとか最悪
愛佳はこうやって人の心を乱すのが上手なところがあるから、嫌になる


「じゃあそろそろ行きますか!」

「…ん」

「私は学校行くし、んならここで!」

「……」

「今日夜部屋行くから鍵開けといて」

「今日から新しいバイトだから遅くなる」

「部屋で待ってる」

「…ん」

「じゃあ!!」


ニコッと笑って手を挙げて背中を向けて歩き出した愛佳

最近短く切って髪を明るくした愛佳の髪が、私に背を向けた時、ゆっくりと靡いて見えた

シャンプーのCMかよ

毎日愛佳なんて見てるし、会ってるし、殺してやるとか言うようなバカな奴なのに


「一緒に帰ろう」


たくさんの言い訳や建前で埋め尽くされた自分の心

この一言を言えない私は、あの時何も伝えれなかった私と変わらない甘えん坊で弱虫なんだ

好きな人を愛すことも、殺す事も出来ない弱虫だ




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