つぎはぎ

「わぁっ……！　素敵……！」
魔法使いさんが見せてくれたのは、とても美しいドレスだった。
白とピンク色を基調としたふわふわとした生地に、たっぷりのレースとフリル、今まで私に全く縁が無かった物が、これでもかとあしらってある。
余りに素敵でドレス自体がきらきら輝いているみたい。それとも私の目が驚いて、本当にちかちかしているのかもしれない。
「これを私に？」
「うん。きっとレッタに似合うよ」
「ありがとう……！　凄く嬉しいわ！　でも、どうして？」
こんなに素敵なドレスを私にくれるのは何故？
嬉しく思う気持ちと疑問に思う気持ちが湧いてきた。
「今日は舞踏会だろう？」
「ええ」
「だから、君もおめかしとかしたいんじゃないかと思って……」
「！」
確かに、舞踏会に行きたいなと思ったことは思ったけれど、まさかこんな風に魔法使いさんが気を使ってくれるとは思わなかったわ……！
「……レッタ？」
「あっ、な、なぁに？」
思わず黙り込む私に、訝しげに魔法使いさんが問いかける。
「もしかして、迷惑だった？」
「ううん！　そんなこと無い！　嬉しいわ！」
思い切り首を横に振る。
「良かった……じゃあ、この部屋で着ておいで。その後、僕が髪を結ってあげるから」
「ええ、ありがとう！　そうさせていただくわね。ちょっと待っていてね」
「うん」
そう微笑みながら頷くと、魔法使いさんは部屋から出ていった。
私は早速着替え始めた。
逸る気持ちを抑えながら、慎重にドレスに袖を通す。
こんなに素敵なドレス見たこと無いわ。
本物のお嬢様みたい……とはいえ、これでも私は一応お嬢様なのだけれども。煌びやかな生活とは無縁だったから、心が弾むのを抑えきれない。
それに、魔法使いさんがこのドレスをくれたってことはね、私の事を好きで、いて、くれて……。
心臓がどきどきするのが分かる。
私の勘違いじゃあないわよね？　そんな答えの出ない考えがぐるぐる回る。
人に着せたことはあっても、自分でこんなドレスを着たことがない私は、少し手間取りながらも、着付けることはできた。
……似合っていると良いな……。
勇気を出してドアを開ける。