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ズビロ3



「・・・・・いやな予感がすんだ、俺」
「なんかあったっけ?」
「さぁな、悪いもんくったんじゃねぇか。」
「ちげぇーよ。失敬だな、お前。失敬だよ、お前、ハゲ」
「妙に丁寧にいってんじゃねぇぇよ。」
「まぁ、失敬なのはいつもじゃない。・・・・・で、浦辺君なんの予感するのさ」
「・・・・・実は岬が一番失敬な奴だよな。」
「きたきたきたきたきたきたきたぁぁぁぁぁ!!!」
「「うわっ、なに!?!?」」
「驚いてる場合じゃねぇ、お前ら臨戦態勢とっときやがれぇぇ!!」
「なんだよって....うわぁぁ、ゴキかよっ」
「ゴキブリ??」
「うわっ、岬、お前よく名前口にできんな!!こんの非国民がッ!!!!」
「ええええ!?非国民関係なくない?」
「落ち着いてつっこんでんじゃねぇよ!!」
「落ち着けよ!浦辺!!確かに俺も苦手だけどよ」
「落ち着いてられっか、こいつら飛ぶんだぞ!!!!」
「って、一匹だけだよ。」
「一匹いたら10匹いると思えは常識だろーーーが!!バカ岬!!!」
「うわっ、こっち来た。浦辺なんとかしろ!!」
「お前が何とかしろ、ハゲ」
「苦手ならお前が処理しろ、アホ辺!!」
「お前がやれ」
「断る!!」
――しゅぅぅーーー
「「ちょっ、岬!!」」
「えっ?・・・あっ、僕、いろんなとこで生活長かったでしょ。結構、大丈夫だよ。」
「・・・・お前、すげーな。」
「今まで一番、お前が頼もしく見えてるかもしれねぇ」
「・・・・・それ、僕誉められてるのかな?」


岬の部屋@井川ver.




「と、言うわけで・・・・ってどういう訳だろうね?」
「知らねぇよ。俺、慣れてねぇし、お前がしっかりしろよ。」
「確かに、井川って言葉で表現することあまり無いよね。」
「・・・・・苦手なんだよ、悪かったな。」
「でも、来てくれたんだよね、ありがとう。」
「まぁ、他の取材とかより…マシ。」
「あははは、正直だね。という訳で、今日は井川選手です。」
「・・・・・ドーモ」
「話、苦手って言うけど、合宿では結構話したよね。」
「森崎と曽我のがうるさかっただろ。」
「君も充分だと思うけど」
「そんなら岬だってうるさかったぜ」
「僕、話、苦手って言ってないし」
「・・・・・お前、俺に対して結構言うよな。」
「そうかな・・・・?」
「合宿中、曽我もうるせぇーけど、お前も相当だったぜ」
「そうそう、合宿で仲良くなったんだよね。森崎君と4人で結構いたよね。」
「あー、まぁな。俺、新参者だったし、お前らが面倒見てくれたって事になるのか?」
「顔に不本意って書いてあるよ。」
「イヤ、感謝シテルゼ」
「別に僕は楽しかったからだけだから。でも、結構4人で仲が良かったって知ってる人多いらしくて。」
「へぇ、マメだな。」
「マメって表現あってるの?」
「しらねぇーよ」
「まぁ、海外長い井川の日本語はおいといて」
「お前さぁ…まぁ、いいや。で?」
「・・・・で、何回か聞かれるって言うか、お願いされるんだ。」
「・・・・・なにを?」
「『井川選手を是非チームにスカウトして』ってファンの人に」
「は?」
「注目されてるって事だよね。しかも、みんなプレーをみて井川を評価してくれてるって事だよね。それって嬉しい。」
「・・・・・・・」
「あっ、照れてる。」
「うっさい、大体なんで岬が嬉しいんだよ。」
「代表って枠だけどチームメイトが正当に評価されるって嬉しいでしょ。」
「そんなもんかねぇ」
「そんなもんだよ」
「あー、そう。ってやっぱりこういう場、苦手だ。」
「顔、ますます赤いね。」
「もう、やめろって。」
「ハイハイ、このままだと多分井川選手が熱だしちゃいそうなので、終わります。これからも井川選手の応援宜しくお願いします。」
「だから、なんで岬が・・・・」
「あははは」

肖岬


舌は単純に味覚を感じる器官だと、そう思ってて。

役割として、それは今でも変わらないと思ってるけど。

「・・・・っ、ん」

湿った唇の間から、抜けた自分の声が妙に甘ったるい。
それもこれも、口内で蠢く舌のせいだ。
動きは的確で、意図的で、我が物顔で。


まるでフィールドで自在にボールを支配されているような、僕だけボールが回ってこない状態の様な、一方的に不利な状態の様な・・・・はっきり言って面白くない。


だから、自分の舌の役割を少し変更して、肖の動きに合わせるように絡ませてみた。

一端、弾かれたように唇を離して、僕を見るから、ちょっと愉快になってニッコリと笑ってみたら


「・・・・・面白いね、岬。」

って言って、綺麗に笑って、また再開しはじめた。
それは一段と深くて、激しいもの。


僕がついていける筈もなくて・・・・・それでもいいやって思える自分がやっぱり、ちょっと面白くなかった。


コジ岬


ほんの数十秒、ただグラスに氷を入れて、炭酸独特の泡の弾ける音を聞きながら中身を注いで――僅かな時間。それでも待たせたと僕の口に自然に登った言葉は、発せられることなく空気だけ漏れた。

――寝ちゃったんだ。

腕を組んだまま、ソファーに沈み込むようにして、俯く姿はとても静かだ。疲れていたのは、前触れもない訪問にドアを開けた時から解ってた。

なぜか今日に限って僕の冷蔵庫には小次郎の好物が冷えてて――帰国をニュースで知ってなんとなく手に取ったって言うのも、多少はあるけど――珍しく疲労の色を隠さない姿に、突然の訪問に対する驚きだとかはどこかに飛んでいった。


顔を見たとたんにギュッと抱き込まれたけど、それは久々の「再会」を示す抱擁ではなくて、寄りかかるように身体を預けるものだった。


案の定、僕が飲み物を用意している短い時間で、小次郎は今結構珍しい姿を見せている。

静かに上下する胸に、僅かに眉間に寄る皺。
腕を組んで、ソファー深く沈み込む姿。
周囲の印象とは逆に、小次郎は凄く静かなタイプだ。
だから一見、普段と変わらない姿。
ただ、閉じている瞼と静かに聞こえる寝息が、限界を告げてた。


――無理して来なくても良いのになぁ。


帰国すれば、自然と注目が集まるのは当然で、慣れない取材や撮影が小次郎のスケジュールに組み込まれてるのは知ってる。
不器用で、真面目な小次郎がそれらに真剣に取り組むだろうってことも…、だから僕からはあえて連絡は控えてた。

そう思っても、やっぱり会いに来てくれたのは嬉しくて。


寝てる事を良いことに、多分僕は泣き笑いみたいな変な顔でいま小次郎を見てる気がする…

――しょうがないなぁ


もぞもぞと隣に腰掛けながら、大して心地よくない僕の膝を貸してみた。
テーブルに置いたグラスの氷がカランッと音を立てる。
きっと薄まって不満顔で飲むだろう小次郎の顔を想像して、ちょっとおかしかった。


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