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源岬←新田


前回の続きと言うか、オマケと言うか・・・










救いなくて良かった・・・・そう思う俺って、やなやつ?でも実際、そうじゃね?いや、俺、器デカイけど・・・でも、まぁ、恋愛は別もんだろ。人の幸せとか、勿論祝いてぇーし、祝えるし。

でも、さ。違うだろ、こればっかりは。そりゃ、あの人達には、すげぇ憧れてる。

岬さんはポジション違ぇけど、滅茶苦茶上手いし、頼りになるし、いっつもすげぇパスくれるから、決めた後は本当に駆け寄りたくなる。現に駆け寄って、抱きついて、引きずり倒して、乗っかって・・・・あー、俺自身、スーパーゴールが嬉しくて、過剰にテンション上がってんだと勘違いしてたし。


でも、違った。あの人の目、見て、気づいた。


なんて表情してんだよ、あんた。って思わず突っ込みたくなった。・・・・・いや、そこで終われば・・・うげっ、その手のやつ、海外多いって聞くしー。ドイツ行って染まったのかよ、あー、勿体ねーとか。不純な目で岬さん見んな、いくらあんたでもソコは不可侵だろって思う程度で済んでた、多分。


でもさ、見ちゃったんだよなー。あの人も・・・岬さんも一瞬だけおんなじ目で見てたから・・・あんたのこと。なんで?なんで?岬さんは俺の先輩で、ちょーかっこよくて憧れで。悔しいけどあんたもスーパーすげぇーやつで、居てくれなきゃ困る存在で、友達で、昔からのチームメイトで・・・・・――ただ、それだけだろ。

なに通じあっちゃってんだよ、デキてんの?男同士だぜ、同じもんついてんだぜ・・・・救えねぇーよ、マジ。

そう、救えねぇよ・・・・――なんだよ、この胸の痛み。羨ましいと、一瞬あの綺麗な目があんただけを捕えたのが、妬ましいと思った、俺ナニ?岬さんのアシストで決めたゴールがやたら嬉しいと、気付いちゃった、俺ナニ?


あー、救いがなくて良かった。あんたのその想いも、あの人のその想いも、絶対出しちゃいけいだろ、秘めなきゃいけないだろ・・・ザマーミロ、せめて報われねぇ奴の思いを知れってんだ、モグラバーカ。

あー、本当にらしくねぇー。誰かに合コン頼も。





腫れた目で見上げた空を、あの人がこんな想いで見上げる事が無いようにと、

――――そっと祈った。







end

源岬←新田





っくそ、年がら年中キャップなんかかぶってんなよ。眩しいですか?そうですか・・・って今日ナイターだけどな。とっくに日なんか暮れてるし、ライト眩しー・・・ってライトか?ああ、ライトが眩しいのかよ。どんだけモグラ体質よ、あんた。室内競技のが向いてんじゃね。フットサルとか、攻撃もいけるし、おー、天職じゃん。やべっ、俺すげっ、日本の代表GKの天職見つけちまったよ。

まっ、内緒にしとくけどな。転向されたらヤバいのなんて、俺だって解ってるぜ、内に秘める俺カッコいい

・・・ってさ・・・・だったら、脱ぐなよっ!!キャップ。普通にとっちまったら、俺が今考えた最高理論「代表GKはモグラマン」が台無しじゃん。ライト平気じゃん、なにそれ?日差しじゃねーの?お洒落?お洒落キャップ?硬派に見えて軟派?

・・・まー、解ってたけどな、俺、賢いし、カッコいいし・・・・そうだよな、俺のが足速ぇーし。背なんてでかけりゃいいもんじゃね、って高さ無いと困るー、守備に高さないと困るーっ・・・・俺は誰だよ。

あー、つか、マジなんなんだって思わね?だってよ、なんなんだよ。そのキャップから一瞬覗いた、その表情。甘ぇーよ、怖ぇーよ、マジ。あの人、そんな目で見るんじゃねーよ。

反、則だろ。イエローじゃなく間違いなく一発レッドだろっ!!キャップで表情なんざ、そんな穏やかな瞳なんざ、ずっと隠しとけよ。

嫌でも、思うだろーが、隙間ねーって、入る余地ねーって、あー、何いっちゃってんの、俺。ハイハイ、もう、ご馳走様でしたー。


・・・あー、俺、バカみてぇ。

源岬






「おーい、岬さーん、お前、ブラック派じゃねーの?」

洗濯機ん中みたいになってんぞ――通りがかった旧友に笑い混じりに茶化されて気が付いた。

手元のコーヒーは大層クリーミーな渦状態。忙しなくカチャカチャと鳴るスプーンとカップの音すら、僕の意識を戻すには至らなかったらしい。

無意識に普段は入れないミルクどころか、砂糖も投入する僕自身の余計な行動は、呆れるより感心する。


(1、2、3・・・・・ヤメタ。)


余計ついでに砂糖の袋の残骸でも数えてみようかと思ったけど・・・・どうにも集中は続いてくれないらしい。諦めて、机に突っ伏してみる。余り眠れてない身体はざわついて、落ち着かない。


(今日、オフでよかった。)

重いのに、じっと出来ない体に不謹慎にも、そう思うけど。結局、1人が居たたまれなくて、クラブハウスに来る僕の不自然さは滑稽。


理由は残念過ぎるくらい理解してる。


――昨夜の突然の告白、言うだけ言って逃げた君・・・・・――


最悪。
言い繕う暇すら、僕には与えられなかった。ただ間が抜けた顔で見送って、気が付いた時には、君はもうとっくに空の上。

連絡手段は無くて、ぐるぐると無駄に廻る頭は考えすぎて、君が向こうに着いた頃にはとっくに気力が削がれてた。

計画的なら、質が悪い。
(・・・・・多分、計画的だろうけど。)


少しだけ体を上げて、手を伸ばしたコーヒーカップ。口をつけたコーヒーはとっくに冷めてた。べたりと残る甘過ぎる後味を増して。

(・・・・甘いものは、苦手なのに。)




――(そんな言い逃げは卑怯だよ。)




end

肖岬


激情のまま、動くもんじゃない。芝を叩いた右手が微かに痛んで、そう思えた。響かない湿った土もやわらかく見えて実は芯は堅い。当たり前といえば当たり前。

少しだけ違和感を感じる右足に「限界か」という思考が、息を吸うほど自然に頭をかすめた。

すぐ、それに後悔が湧いた。十分走り回った記憶はある。普段だったら上々だ、そのくらいには十分走った。

それでも、ご丁寧にも容赦なく削ってくれた相手は今も軽やかに、いっそ奇麗にリスタートしている。

洩れる舌打ちに素早く起こそうとする身は限りなく重い。短く蹴り上げた土はやっぱり固く、行った行為の馬鹿さ加減にうんざりする。それは美的な感覚のかけらも、合理性もない行動。


(変わるよね、)
(そう?)
(全く、別人だよ)


悔しい程、見る間に遠ざかる背中に今は不要な会話を思い出す。

ああ、集中が切れている。脳裏に浮かぶのは似つかわしくない甘いものばかり。


(嫌い?)
(まさか、どっちも肖だよ)
(それだけ?)
(ずるい聞き方するなぁ――・・・・・)


つい最近交わした会話。蘇る笑顔は可愛くて、今、厳しく当たって来た姿からは想像出来ない。


(すごい贅沢してるって思うよ)
(だってどっちの肖も)



―()

(それは、そのまま俺に取って変わる言葉だって、君は気付いてる?)


切らしている集中なんてない筈だ。贅沢な時間を可能な限り、味わえるのは今も同じ――現金にも少し軽く感じる体を、ピッチに投げだした。




end

源岬

友情ではない、断じて。それだけは確信を持って言える曖昧な感情。
むさ苦しいだけの見飽きた裸体も、もう幾度となく見た勝ち試合で喜び走ってくる姿も・・・・――アイツだけ、違っているのは明確で。


「・・・・・若林君?」


不思議そうに問いかける戦術の確認の仕草さえ、甘い。そう甘い、そんな感覚が俺を酔わせる。俺は人より甘いものが好きなのか?解りきった嗜好すら、判断が覚束ない。


――目眩ガシソウダ、全ク。


「あのさ、聞いてる?・・・・おーい」

「・・・・・聞いてる」


今、ふるふると眼前で揺れる掌も、何気なくスキンシップとして投げだされる体も・・・・トロリとしたなんとも言い難い芳香さえ、漂ってくる。触れたい、味わいたいと、繰り返されるのは、常識と欲望の葛藤。
なんだ、これは。身体中を支配する胸焼けしそうな、でも決して飽きることのない・・・・・――この味覚。

友情ではない、断じて。不透明で曖昧な感情・・・・・・これは、


「(何なんだ、一体?)」





     






―「若林君、珍しいね、サッカー以外の考え事」
―「いや、ある意味、サッカーも混じってる・・・・切り離せないとこ、とかな」
―「・・・・・・ふーん?」





end

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