久しぶりに、故郷に帰った。



【思い出す】



何年ぶりだろうか。
様々な部分が変わり、それでもどこか懐かしい土地。
懐かしさと少しの寂しさを覚えつつ、私は目の前の風景を静かに見つめた。

あぁ、帰ってきたんだ……

そうしながら思い出すのは、やはり青春時代。
あの小さかった頃、仲の良かった友人は元気にしているのだろうか。

……もう、ここにはいないのだろうか。

私も、ここにはもういない。
自分だけだとは、思っていない。

それでも。

会えたら。

私はとっさに首を振る。
頭に浮かんだ「彼」を振り払うように。

……だから、嫌だったんだ。
止めていた想いが膨らんでいく。

会いたくない。
――――――――会いたい。
見たくもない。
――――――――触れたい。

通る人の中に「あの人」がいたら良いのにと目が追うのに、
会ってしまったら最後だと、奥底で警鐘が鳴る。

あぁ、分かってる。
だから、

帰ってきたくなかった。
――――――――帰ってきたかった。

誰か、止めて。